解雇37(スカンジナビア航空事件)

おはようございます。

さて、今日は、変更解約告知に関する裁判例を見てみましょう。

スカンジナビア航空事件(東京地裁平成7年4月13日・労判675号13頁)

【事案の概要】

Y社は、スウェーデンに本店をおく会社であり、他の外国2社とともに航空会社A社を運営していた。

Xらは、A社の日本支社となっていたY社の従業員、業務内容および勤務地を特定した雇用契約を締結していた。

A社の航空部門の収益が悪化したため、日本において年功序列賃金体系をとっていたY社は、賃金制度の変更に着手した。

Y社は、平成6年6月、地上職およびエア・ホステスの日本人従業員全員に対し、早期退職募集と再雇用の提案を行い、割増退職金の支給を提示した。再雇用の内容は、(1)年俸制の導入、(2)退職金制度の変更、(3)労働時間の変更、(4)契約期間(1年)の設定および(5)有給休暇は労働基準法の定めに従った日数に削減する、というものであった。

同募集の応募期限である同年7月末までに、115名が早期退職に応じたものの、残り25名は、早期退職に応じず、従前の労働条件で雇い続けるよう労働組合を通じて回答する一方、仮処分を申し立てた。

これに対し、Y社は、募集に応じなかった25名を、同年9月末付けで解雇するとした。

Xらは、解雇の効力を争い、地位保全等を求めた。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xらに対する解雇の意思表示は、要するに、雇用契約で特定された職種等の労働条件を変更するための解約、換言すれば新契約締結の申込みをともなった従来の雇用契約の解約であって、いわゆる変更解約告知といわれるものである。

2 YとXらとの間の雇用契約においては、職務および勤務場所が特定されていたため、職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の変更を行うためには、これらの点についてXらの同意を得ることが必要であった。

3 しかし、労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができるものと解するのが相当である。

4 全面的な人員整理・組織再編が必要不可欠となり、その計画が図られた結果、雇用契約により特定されていた各労働者の職務及び勤務場所の変更が必要不可欠なものであった。本件合理化案を実現するために必要となる、(1)年俸制の導入、(2)退職金制度の変更、(3)労働時間の変更については、いずれもその変更には高度の必要性が認められる。賃金体系の変更は、従業員の賃金が総体的に切り下げられる不利益を受けることは明らかであるが、地上職の場合、会社により提案された新賃金(年俸)と従来の賃金体系による月例給に12(月)を乗じることにより得られる金額を必ずしもすべてが下回るものではないし、Xらが新労働条件での雇用契約を締結する場合には、会社は、従来の雇用契約終了にともなう代償措置として規定退職金に加算して、相当額の早期退職割増金支給の提案を行ったことをも合わせ考えると、業務上の高度の必要性を上回る不利益があったとは認められない。

5 労働条件の変更をともなう再雇用契約の申入れは、会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性は右変更によって右各債権者が受ける不利益を上回っているものということができるのであって、この変更解約告知のされた当時及びこれによる解雇の効力が発生した当時の事情のもとにおいては、再雇用の申入れをしなかった各債権者を解雇することはやむを得ないものであり、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされていたものと認めるのが相当である。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。