労働者性2(加西市シルバー人材センター事件)

おはようございます。

今日は、労災保険上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

加西市シルバー人材センター事件(神戸地裁平成22年9月17日・労判1015号34頁)

【事案の概要】

Y社は、物流機器製造事業(運搬用ゲージなどの製造)等を業とする会社である。

Xは、Y社に工員として勤務していたが、定年退職後に、A社に登録してY社で仕事をしていた。

Xは、工場で作業中に左手の親指から中指の3指を切断する傷害を負ったことが労働者の負傷に該当するとして、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付および休業補償給付の申請をしたところ、西脇労働基準監督署長は、Xが労災保険法上の労働者に該当せず、同法の適用がないことを理由として、不支給とする処分をしたため、その取消しを求めた。

【裁判所の判断】

Xの労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法にい労働者は、労基法に定める労働者と同義であり、同法9条は、労働者とは「職業の種類を問わず、事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定めているから、労働者に該当するか否かについては、使用者の指揮監督の下に労務を提供し、使用者からその労務の対償としての報酬が支払われている者として、使用従属関係にあるといえるかを基準として判断すべきであると解される。

2 そして、労務の提供が他人の指揮監督下において行われているかどうかに関しては、具体的には、業務従事の指示等に対する諾否の事由の有無や、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所及び勤務時間が指定され管理されているかどうか、労務提供につき代替性の有無等の事情を総合的に考慮して判断されるべきものといえる。

3 しかし、労働者性の判断は、個々の具体的な事情に基づき、労務提供の実態について実質的に検討して行うべきものであるから、本件で、形式的には、XとY社及びA社間に雇用契約が存在せず、Y社がA社にした注文につき、XがA社との間の請負又は準委任契約に基づいて仕事を行うことになっているとしても、このことのみから、Xの労働者性が否定されるものではない

4 Xは、A社に登録後も、Y社の加工部門において、定年退職前と全く同様の労務に従事して、他の従業員と同じく、専らY社で就労していた状況であったということができ、Xに対する報酬も、実質的には労働の対価として支払われたものといえるのであるから、Xは、Y社と使用従属関係にある労働者に該当すると認められるというべきである

労働者性については、形式ではなく、実質を重視して判断されるという良い例ですね。

判断基準については、上記判例のポイント2を参考にしてください。

なお、Xは、上記のとおり、労働者性が認められ、労災が認められました。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。