おはようございます。
今日は、公務員の飲酒運転による物損事故と退職手当の全部支給制限処分に関する裁判例を見ていきましょう。
大津市(懲戒免職処分)事件(最高裁令和6年6月27日・労経速2558号3頁)
【事案の概要】
本件は、普通地方公共団体であるY市の職員であったXが、飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、退職手当管理機関であるY市長から、Y市職員退職手当支給条例11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けたため、Y市を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。
原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を認容すべきものとした。
【裁判所の判断】
1 原判決中、Y市敗訴部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関するXの請求を棄却する。
【判例のポイント】
1 Xは、長時間にわたり相当量の飲酒をした直後、帰宅するために本件自動車を運転したものであって、2回の事故を起こしていることからも、上記の運転は、重大な危険を伴うものであったということができる。そして、Xは、本件自動車の運転を開始した直後に本件駐車場内で第1事故を起こしたにもかかわらず、何らの措置を講ずることもなく運転を続け、さらに、第2事故を起こしながら、そのまま本件自動車を運転して帰宅したというのであるから、本件非違行為の態様は悪質であって、物的損害が生ずるにとどまったことを考慮しても、非違の程度は重いといわざるを得ない。
また、Xは、本件非違行為の翌朝、臨場した警察官に対し、当初、第1事故の発生日時について虚偽の説明をしていたものであり、このような非違後の言動も、不誠実なものというべきである。
さらに、Xは、本件非違行為の当時、管理職である課長の職にあったものであり、本件非違行為は、職務上行われたものではないとしても、Y市の公務の遂行に相応の支障を及ぼすとともに、Y市の公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかである。
これらの事情に照らせば、本件各事故につき被害弁償が行われていることや、Xが27年余りにわたり懲戒処分歴なく勤続し、上告人の施策に貢献してきたこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る市長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。
こういう事案は、どちらの結論の判決も書けてしまいます。
どの事実を重視し、どう評価するかの問題ですので。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。