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今日は、夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求に関する裁判例を見ていきましょう。
医療法人みどり会事件(大阪地裁令和5年12月25日・労判ジャーナル147号26頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、介護老人保健施設において介護職員として勤務していたXが、Y社に対し、未払時間外割増賃金等の支払並びに労基法114条に基づく付加金等の支払を求め、また、同法39条の年次有給休暇の取得を申請していないのに、Y社が、Xに無断でこれを取得したこととしてその残日数を減少させたとして、不法行為に基づき、当該日数の賃金相当額の損害賠償等の支払を求め、さらに、令和3年度上半期及び下半期の賞与の算定にあたって、合理的な理由なく最低評価をしたとして、不法行為に基づき、それぞれ減額分2万円の損害賠償等の支払等を求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払割増賃金等支払請求一部認容
損害賠償等請求一部認容
【判例のポイント】
1 夜勤時の休憩時間に関して、本件運用変更前について、Xが、夜勤において、夜勤者2名の間で休憩に関する取り決めがなく、相勤者がナースコール等に対応するとは限らなかった以上、Xは、当該待機時間中、常にこれに対応する必要があったというほかなく、そして、ナースコール等の回数は、毎回の夜勤ごとに相当の回数に及んでおり、これがごく稀であって実質的に対応の必要が乏しかったとみることもできないから、Xは労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価するのが相当であり、本件運用変更後も、本件施設の介護職員は、夜勤時に休憩を取得すべきとされる時間帯においても、相勤者が巡視やナースコール等への対応を行っている間に利用者から重複ナースコール等があった場合における対応を免除する旨の指示を受けておらず、このような事態がごく稀であって実質的に対応をする必要がなかったともいえないから、休憩時間とされる時間についても、労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたといわざるを得ないから、本件運用変更の前後を問わず、本件請求期間中のXの夜勤については、休憩時間を取得することができたものとは認められない。
2 Y社の就業規則には、1か月単位の変形労働時間制を採用する旨の記載があるが、Y社の就業規則において、Y社が実際に作成した勤務割表の労働時間に対応する各日・各週の労働時間の特定がされているとは認められず、当該変形労働時間制は、労働基準法32条の2第1項所定の要件を欠くものといわざるを得ない。
上記判例のポイント1の理屈は異論のないところかと思います。
看護師に限らず、警備員等についても、同様の議論が妥当します。
法律の考え方はわかっていても、人手不足の昨今、実際にどのように労務管理をしたらよいのか悩ましいところです。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。