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今日は、上司の言動がパワハラによる不法行為と認められた事案を見ていきましょう。
倉敷紡績事件(大阪地裁令和5年12月22日・労経速2544号34頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に勤務していたXが、Y社の執行役員でありXの上司であったAから罵声を浴びせられるなどのパワーハラスメントを受けたことによりY社を退職せざるを得なくなり、精神的苦痛を受けたなどとして、Y社らに対し、不法行為(被告Aに対しては民法709条、Y社に対しては同法715条1項)に基づく損害賠償として、660万円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社らは、Xに対し、連帯して、55万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Aは、令和3年2月1日に情報機器システム部の部長に就任した後、同年9月30日にXがY社を退職するまでの間、Xに対し、Y社における業務の進め方等に関し、「アホ」「ボケ」「辞めさせたるぞ」「今期赤字ならどうなるかわかっているやろな」といった言動を日常的に繰り返し行っていた。
Aは、令和3年4月又は5月、顧客とのWEB会議の終了後に、Xが座っていた椅子の脚を蹴ったことが1回あった。
Aは、令和3年7月頃、Xが新入社員を指導していた際、WEB会議システムを介して、新入社員の目の前で、Xほか1名を指して「こいつらは無能な管理職だ。こんな奴らに教育されて可哀そうだ。これくらいのことができないのは本当に無能だ。」と発言した。
Aは、前記の期間において、Xに対し、Y社において利用が認められているフレックスタイム制度や在宅勤務の抑制を示唆する言動をし、また、Y社の規定で認められている宿泊費の定額精算を認めず、実費で精算すべきであると述べた。
2 前記AのXに対する言動は、Y社のハラスメント防止規則の定めるパワハラに当たり、Xに対する注意や指導のための言動として社会通念上許容される限度を超え、相当性を欠くものであるから、Xに対する不法行為に当たるというべきである。
慰謝料の金額よりもレピュテーションダメージを考えるべき事案です。
社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。