労働者性54 業務委託契約の終了にあたって、原告の労働契約法上の労働者性が否定された事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、業務委託契約の終了にあたって、原告の労働契約法上の労働者性が否定された事案を見ていきましょう。

アイグラフィックサービス事件(東京地裁令和5年3月2日・労経速2538号3頁)

【事案の概要】

本件は、平成14年8月以降、Y社が取り扱っていた紫外線硬化装置等の設置、移設、補修及び保守等の業務に携わっていたXが、Y社に対し、(1)主位的に、Y社と労働契約を締結して上記業務を行っていたところ、Y社から令和元年10月20日をもって解雇または雇止めをされたが、いずれも無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②労働契約に基づく賃金の支払を求めるとともに、③不法行為に基づく損害賠償の支払を求め、(2)予備的に、Y社と業務委託契約を締結して上記業務を行っていたところ、Y社から上記日をもって当該契約を解除されたが当該解除は無効であるとして、④業務委託契約上の権利を有する地位にあることの確認、⑤業務委託契約に基づく報酬の支払、⑥不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 予備的請求のうち、④は却下

2 その余は請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に業務委託契約は報酬支払特約が附帯した有償の準委任契約の形式をとるものと解されるところ、その場合、委任事務の受託者は、委託者に対して委任の本旨に従って事務処理義務、善管注意義務、忠実義務を負い、委任事務の履行に応じて約定の報酬請求権等の債権を有することになるが、このような業務委託契約に係る債権債務関係について契約当事者間に争いが生じたとしても、通常、契約当事者は、当該業務委託契約から発生する報酬請求権等の個別の請求権に基づく給付の訴えが可能であり、かつ、それにより紛争の解決を図ることができるから、これとは別個に確認訴訟により契約関係の存否そのものの確認を求める必要がある場合は限定されるものと解される。さらに、本件についてみても、XはY社との間でX主張の業務委託契約が締結された旨を主張するところ、Xの主張を前提としても同契約では、委託の対象となる業務の種類が定められているにとどまり、実際に委託を受けた具体的な業務は特定されていないから、包括的な基本契約にとどまるものといわざるを得ない。そうすると、上記の契約から直ちにXとY社との間における報酬請求権等の具体的な債権債務関係が形成されるものではなくその後の個別の業務委託契約の締結によって初めて具体的な債権債務関係が生じるものと解され、また、Xの主張を前提としても、X主張の業務委託契約により、Y社がXに対して個別の業務を委託することが義務付けられているものとも認め難い。
以上の事情に照らせば、Xにつき、個別契約として締結された業務委託契約に基づく給付請求とは別に、基本契約として締結されたものとみられるX主張の業務委託契約上の権利を有する地位にあることを確認することが、Xの現在の権利又は法律関係に生じている不利益又は危険を除去するために必要かつ適切であるとは認め難い。
したがって、Xの上記主張は採用することができず、本件の予備的請求に係る訴えのうち、業務委託契約上の地位を有することの確認を求める部分は、確認の利益を欠くものといわざるを得ないから、不適法な訴えとして却下されるべきである。

上記論点については、すぐに労働者性に関する判断要素のあてはめに入りがちですが、そもそも論として、確認の利益が認められるかをまずは確認する必要があります。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、判断に悩まれる場合には、事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。