おはようございます。
今日取り上げるのは、ブックローン事件(東京地裁平成22年2月10日判決・労判1002号20頁)です。
この事件は、直接的には、不当労働行為性が問題となっているケースです。
【事案の概要】
会社は、60歳を定年とし、継続雇用制度を採用していた。
会社には、3つの労働組合があり、いずれも過半数組合ではない(つまり、組合はいずれも労使協定の締結資格がない)。
そこで、会社は、過半数代表との間で、労使協定を締結し、選定基準を設けた。
継続雇用の具体的な手続きとしては、従業員は、定年到達日の3か月前までに継続雇用希望の申込みを行い、会社と協議すると流れ。
ここからが問題。
組合の1つが、会社に対し、度々、継続雇用制度を交渉課題として団体交渉を申し入れたが、会社は、一度もこれに応じなかった。
会社の言い分は、次のとおり。
「組合には、継続雇用に関する労使協定の締結資格がないから、団体交渉をしても無意味である」
また、組合員の1人は、会社の継続雇用制度に異議があるとして、継続雇用希望の申込みをしなかったため、この従業員は、定年退職となった。
①組合は、会社の団交拒否は、労組法7条2号の不当労働行為にあたる、
②定年退職となった従業員は、会社が継続雇用の措置をとらなかったことが同法1号または3号の不当労働行為にあたる、
として、大阪府労委に救済申立てをした。
府労委は、①については不当労働行為と認めたが、②については認めなかった。
その後、当事者双方から再審査の申立てがされたが、中労委は、いずれも棄却した。
そのため、当事者双方が中労委命令の取消しを求め、提訴した。
【裁判所の判断】
①は、不当労働行為にあたる。
②は、不当労働行為にあたらない。
【判例のポイント】
1 ①について
会社が組合との間で、継続雇用に関する労使協定などや就業規則における継続雇用規定に定める基準よりも組合員にとって有利な基準を労働協約で別個に定めることは何ら妨げないのであるから、組合に労使協定の締結資格がないことが、団交拒否の正当な理由とはならない。
2 ②について
従業員は、継続雇用規定に基づく継続雇用希望の申込みをしなかった結果、定年退職となったものであるから、会社が継続雇用しなかったことは不当労働行為にはあたらない。
以下、感想。
①については、会社側が労働組合法、高年齢者雇用安定法の解釈を誤ったと言わざるを得ません。
②については、上記事実関係からすれば、裁判所の判断は妥当。
この従業員が継続雇用制度に異議がありつつも、継続雇用希望の申込みをしていたとしたら、どうなっていたか?
できることならば、申込みだけはしておいてほしかったところ。
実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。