おはようございます。
今日は、解雇の意思表示の存否及び離職証明書の不実記載に関する裁判例を見ていきましょう。
ビッグモーター事件(水戸地裁令和5年2月8日・労判ジャーナル140号2頁)
【事案の概要】
本件は、自動車及び自動車部品販売業並びに自動車修理、解体業及びレッカー作業等を目的とするY社に雇用されていたXが、Y社から解雇されたが、本件解雇は違法であり、また、Y社が離職票に不実の記載をしたことにより国民健康保険税の軽減を受けることができなかったとして、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金合計452万5959円等を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求一部認容(Xの請求額452万5959円を認容)
【判例のポイント】
1 Y社は、解雇の意思表示について否認しており、本件解雇に客観的合理的理由があり、社会通念上相当であることについての具体的主張をしていない。そして、Xが、他の従業員に自分の業務を手伝わせたり、車検の台数制限などを行ったりしていたという問題のある言動があったとは認められず、XとY社との間の雇用契約を直ちに一方的に解消し得る解雇事由があるとは認められないこと、Dエリアマネージャーは、Xについて解雇が認められるとは思っていなかったことに照らせば、本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、違法である。
2 Xは、本件解雇により離職したものであり、「非自発的理由による失業」であり、Xは、Y社に対して、解雇されたとの認識を明示していたにもかかわらず、Xに、離職証明書に記載する離職理由について何ら確認することなく、本件離職証明書に「労働者の個人的な事情による離職」であり、「離職理由に異議」がないとの虚偽の記載をしたものと認められる。
事業主が離職証明書について虚偽の記載をした場合について、罰則が設けられているものであること(雇用保険法83条1項1号)に照らしても、上記のY社による虚偽記載が、Xに対する違法な行為であると認められることは明らかであり、Y社に上記記載が違法であることについての認識があったものと認められる。
したがって、Y社による本件離職証明書の不実記載は、Xに対する不法行為に当たる。
上記判例のポイント2については注意が必要です。
このような事態にならないように慎重に手続きを進めることが求められます。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。