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今日は、賃金減額不同意に基づく未払賃金等請求に関する裁判例を見ていきましょう。
海外商事事件(東京地裁令和4年11月30日・労判ジャーナル138号36頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員が、Y社に対し、同意していないにもかかわらず賃金を減額されたとして、労働契約に基づき、減額された未払賃金等の支払を求めるとともに、時間外労働をしていたと主張して、労働契約に基づき、未払割増賃金等の支払並びに労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 Y社は、Xに対し、仕事ができていないことなどを説明した上で、平成28年6月度からの賃金を20万円に減額することを申し入れ、同様の状態が続いたため、平成30年1月度からの賃金を10%(2万円)減額することを申し入れたところ、いずれもXはこれに同意したと主張するが、Y社の上記主張を裏付ける確たる証拠はないから、Y社の上記主張は採用することができないが、Y社は、コロナ禍で業績が悪化したため、Xを含む全従業員に対し、令和3年2月度からの賃金を5%減額することを申し入れたところ、Xの同意が得られたと主張するが、XがY社の状況を理解した上で令和3年2月度からの基本給が減額になることに同意する旨の書面に署名しただけでなく、減額幅は5%にとどまり大きいものとはいえず、Xだけでなく全従業員が対象となっていること、コロナ禍によりY社の業績が悪化し、他の経費削減方法については既に尽くしていることを書面で説明していることなどに照らすと、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するといえ、Xは、令和3年2月度からの基本給が5%減額になることに同意したと認められる。
どのような事情があれば労働条件の不利益変更について労働者の自由な意思に基づく同意を認定してくれるのか、とてもよくわかる事案ですね。
是非、参考にしてください。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。