セクハラ・パワハラ76 ゼネラルマネージャーのパワハラに基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、ゼネラルマネージャーのパワハラに基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

日本ビュッヒ事件(大阪地裁令和5年2月7日・労判ジャーナル137号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社から解雇されたが、その後、Y社は解雇を撤回したため、Xが、Y社に対し、なおも従業員としての地位に不安があるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに将来分の賃金の支払を求め、さらに、Y社のゼネラルマネージャーらから受けたパワーハラスメントやY社による解雇が不法行為又は債務不履行を構成するとして、使用者責任又は債務不履行に基づく損害賠償請求として慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求却下

損害賠償請求として50万円認容

【判例のポイント】

1 (1)GMは、Xが、マネージャーの地位にはなく、a営業所長との役職も存在しないなどとして、Xがこれまで果たしてきた役割を否定する内容のメールをXだけでなく、他のマネージャーにも送信したものであり、このようなGMの行為は、Xの自尊心を深く傷つけるものであって、軽率のそしりを免れず、不法行為を構成するというべきであり、(2)GMによる10月5日ミーティング以降のXに対するメールの送信等は、自らの言動の問題性を何ら顧みることなく、これに恐怖心等を抱くXへの心情にも全く配慮しないまま、自らの指示に従おうとせず、逆に自らを失脚させようとしたXをY社から排除すべく行われたものであると認めるのが相当であって、社会通念上許容される範囲を逸脱し、従業員の人格権を侵害し、不法行為を構成するというべきであり、(3)本件解雇に解雇理由がないことが明らかであり、その目的が不当といえること、GMが独断で本件解雇に及んだこと等に照らすと、本件解雇は、GMが自らの権限を濫用して行った恣意的で著しく社会的相当性を欠くものというべきであって、GMは、本件解雇後、Xが担当していた顧客や販売会社に対し、解雇したXの評価を貶めるような発言をしたことと併せ、不法行為を構成するというべきである。

2 本件解雇後の経過について、令和4年1月4日の面談におけるGMらのXに対する発言は、自らの問題を何ら顧みることなく、Xに非がある旨を述べ、退職を迫るものであり、およそ許容し難いものであって、Xの人格権を侵害する不法行為を構成するというべきであり、本件けん責処分は、Xに対する不法行為を構成するというべきであり、従業員を敵視し、退職させようとの意図のもとに自宅待機状態を継続させていることは、不法行為を構成するというべきである。

退職させる意図での自宅待機命令は、それ自体が不法行為と評価される可能性がありますので注意が必要です。

自宅待機命令をする場合は、合理的な理由があるかについて客観的に判断しましょう。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。