有期労働契約16(明石書店事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

明石書店事件(東京地裁平成22年7月30日・労判1014号83頁)

【事案の概要】

Y社は、本の出版および販売等を業とする会社である。

Y社では、期間の定めのない契約の従業員を正社員と呼び、有期労働契約の従業員を契約社員と呼んでいる。採用時は、全員、契約社員である。

Xは、Y社と有期労働契約を締結し、入社し、制作部に配属された。

Xは、Y社と、平成19年10月9日~平成20年4月30日、平成20年5月1日~平成21年4月30日、平成21年5月1日~平成22年4月30日と、労働契約を更新してきた。

しかし、平成21年5月1日~平成22年4月30日の労働契約の契約書には、「本件労働契約期間満了時をもって、その後の新たな労働契約を結ばず、本件契約は終了する。」(本件不更新条項)との記載がある。

Y社は、本件不更新条項を根拠として、Xを雇止めにした。

これに対し、Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 期間の定めのある労働契約は、期間が満了すれば、当然に当該契約は終了することが約定されているのであり、原則として、期間の満了とともに、労働契約は終了することになる。しかし、期間の定めのない労働契約においては解雇権濫用法理が適用される一方で、使用者が労働者を雇用するにあたって、期間の定めのある労働契約という法形式を選択した場合には、期間満了時に当然に労働契約が終了するというのでは、両者の均衡を著しく欠く結果になることから、判例法理は、雇用継続について、「労働者にある程度の継続を期待させるような形態のものである」という、比較的緩やかな要件のもとに、更新拒絶に解雇権濫用法理を類推適用するという法理で運用している。もとより、具体的な解雇権濫用法理の類推適用をするについては、当該契約が期間の定めのある労働契約であることも、総合考慮の一要素にはなるものの、これを含めた当該企業の客観的な状況、労働管理の状況、労働者の状況を総合的に考慮して、更新拒絶(雇止め)の有効性を判断するという運用を行っているのであり、このような判例法理は、個別の事例の適切な解決を導くものとして、正当なものとして是認されるべきである。

2 本件においては、Xの労働契約の3度目の更新にあたって、更新の前年にY社の方針のもとに、本件不更新条項が付されたことから、Y社は、上記の判例法理の適用外になったと主張する。しかし、少なくとも従前においては、Y社の社内においては、期間の定めのある労働契約を締結していた契約社員には、更新の合理的な期待があると評価できることは明らかである

3 このような状況下で、労働契約の当事者間で、不更新条項のある労働契約を締結するという一事により、直ちに上記の判例法理の適用が廃除されるというのでは、上述の期間の定めの有無による大きな不均衡を解消しようとした判例法理の趣旨が没却されることになる。

4 本件不更新条項の根拠として、Y社は、厚生労働省告示に従ったのであるのであると主張するが、Y社が主張する方針、特に概ね3年を目処に正社員化できない契約社員の雇用調整を行うことの合理性を窺わせる事情が想定できないことを考えれば、本件不更新条項を付した労働契約締結時の事情を考慮しても、本件雇止めの正当性を認めることはできない。

突如、合理的理由なく、契約更新をしない旨の条項を入れただけでは、雇止めは有効にはなりません。

上記判例のポイント1の視点は、会社側も持っておくべきです。

有期労働契約だからといって、そんなに簡単に解雇できませんので、ご注意ください。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。