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今日は、不動産会社における事業場外みなし労働時間制適用の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
住友不動産事件(名古屋地裁令和5年2月10日・労判ジャーナル136号36頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に対し、雇用契約に基づき、時間外労働に対する未払割増賃金等の支払及び付加金等の支払を求め、また、Xは、パワーハラスメントを受けたとして、営業所の所長であるC及びXの指導係であるDに対しては、不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y社に対しては、使用者責任(不法行為)、職場環境配慮義務違反又は措置義務違反(不法行為又は債務不履行)による損害賠償請求権に基づき、連帯して、330万円等の支払をもとめた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 Xは、土地の確認等のために営業所外での業務を行うことがあったと認められるが、Xは、Cに対し、一日の行動予定を毎朝メール送信しており、その中には営業所外での業務を行う予定が記載され、また、Xは営業所外での業務を行う場合でもいったん出社した上で、営業所外に移動し、再び営業所に戻っているのであるから、Y社がXの勤務の状況を具体的に把握することが困難であると認めるに足りないから、「労働時間を算定し難いとき」に該当するとは認められず、Xに対する事業場外みなし労働時間制は適用されない。
2 Cの行為について、Xに対する指導の中で半年程度の間、暴行、暴言が少なくない頻度で継続的に行われたことが認められ、XがY社を退職した理由の1つにもなったことが認められるが、他方で、Cによるハラスメントが業務と無関係に行われたものではなく、指導の必要性自体は否定できないこと等の事情を総合考慮すれば、Cの不法行為によってXに生じた精神的苦痛に対する慰謝料としては、70万円と認め、また、Y社は使用者責任に基づく損害賠償として連帯して、77万円等を支払う義務を負う。
事業場外みなし労働時間制については、過去の類似の裁判例と同様、有効に運用することは極めて困難です。
残業代請求リスクが高まりますので、安易な導入は控えましょう。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。