派遣労働16(パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣法違反の雇用契約で働く労働者と派遣元・派遣先との法律関係に関する最高裁判決を見てみましょう。

パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件(最高裁平成21年12月18日・労判993号5頁)

【事案の概要】

本件は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造を業とするY社の工場で平成16年1月からPDP製造の封着工程に従事し、遅くとも同17年8月以降は、Y社に直接雇用されて同月から同18年1月末まで不良PDPのリペア作業に従事していたXが、Y社によるXの解雇及びリペア作業への配置転換命令は無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有することの確認、賃金の支払、リペア作業に就労する義務のないことの確認、不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。

【裁判所の判断】

本件派遣は派遣法違反であるが、派遣先会社との黙示の労働契約の成立は否定

【判例のポイント】

1 請負契約においては、請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが、請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている。よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することはできない。

2 Y社は、上記派遣が労働者派遣として適法であることを何ら具体的に主張立証しないというのであるから、これは労働者派遣法の規定に違反していたといわざるを得ない。しかしながら、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである

3 XとY社との法律関係についてみると、Y社はC社によるXの採用に関与していたとは認められないというであり、XがC社から支給を受けていた給与等の額をY社が事実上決定していたといえるような事情もうかがわれず、かえって、C社は、Xに本件工場のデバイス部門から他の部門に移るよう打診するなど、配置を含むXの具体的な就業態様を一定の程度で決定し得る地位にあったものと認められるのであって、Y社とXとの間において雇用契約関係が黙示に成立していたものと評価することはできない

派遣先との黙示の労働契約の成否については、この最高裁判例をベースに考えることになります。

マツダ防府工場事件の地裁判例が出されましたが、あくまでまだ地裁レベルです。

現時点では、最高裁判決が示した規範に従うのが無難です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。