賃金258 賃金相当額の損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金相当額の損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

グラインドハウス事件(東京地裁令和4年12月21日・労判ジャーナル134号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結したと主張するXが、雇用契約に基づく賃金請求並びに会社法423条1項及び会社法429条1項に基づき、Y社及び取締役であるBに対して、連帯して約143万円等の支払を求め、これに対し、Y社は、第1回口頭弁論期日において、消滅時効の抗弁の主張をしたところ、Xは、上記金員のうち10万円については、既に前件訴訟において、確定判決を得ていることから取下げ、その余の約133万円については、消滅時効の主張を踏まえて、Y社及びBに対し連帯して、民法415条及び会社法429条1項に基づく損害賠償請求として支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社は、従業員を社会保険にも加入させず、雇用契約書も存在していなく、タイムカード等従業員の勤務状況を裏付けるものを設置しておらず、就労時間もXが事前に聞いていたものとは大幅に異なっていたと主張するが、Y社がY社に勤務していたCに対し、支払った給与からは、雇用保険料及び所得税のみが控除されており、健康保険料や厚生年金保険等は控除されていなかったこと、Y社にタイムカードが設置されていなかったこと、Y社とCとの間及びY社とAとの間で雇用契約書が作成されていなかったことが認められるところ、上記事実は、法律等に違反する行為であり、その法律違反について、法律に規定されている罰則等が適用される可能性はあるが、上記の法律違反があることによって、Xに対し、賃金相当の損害金が発生するものではないから、Xの主張は採用することはできない。

2 Xは、Y社及びBは、未払給与に対する請求や相談に一切応じず、令和元年に出された前件判決にも従わないため、回収不能となったことから就労環境に対する安全配慮義務に違反していると主張するが、前件判決について確定後も支払われていないことが認められるが、判決確定後については、執行手続が法律上予定されているのであるから、前件判決について支払を怠っていることをもって安全配慮義務違反があるとは認められないし、前件判決の支払を怠ったことによって、新たに賃金相当の損害金が発生するとは認められないから、Xの主張は採用することができない。

法律構成に若干無理がありますね。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有給休暇に関する運用を行うことが肝要です。