おはようございます。
今日は、賞与の支給日在籍要件の適法性に関する裁判例を見ていきましょう。
医療法人佐藤循環器科内科事件(松山地裁令和4年11月2日・労判ジャーナル130号2頁)
【事案の概要】
本件は、診療所や有料老人ホーム等を運営する医療法人に勤務していたが、病死により退職したXの子が、Xの退職が夏季賞与の支給日の20日前であったことから当該夏季賞与が支給されなかったことについて、本件医療法人に当該賞与(28万2305円)などを支給するように求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 本件のような病死による退職は、整理解雇のように使用者側の事情による退職ではないものの、定年退職や任意退職とは異なり、労働者は、その退職時期を事前に予測したり、自己の意思で選択したりすることはできない。このような場合にも支給日在籍要件を機械的に適用すれば、労働者に不測の存在が生じ得ることになる。また、病死による退職は、懲戒解雇などとは異なり、功労報償の必要性を減じられてもやむを得ないような労働者の責めに帰すべき理由による退職ではないから、上記のような不測の損害を労働者に甘受させることは相当ではない。そして、賞与の有する賃金の後払いとしての性格や功労報償的な意味合いを踏まえると、労働者が考課対象期間の満了後に病死で退職するに至った場合、労働者は、一般に、考課対象期間満了前に病死した場合に比して、賞与の支給を受けることに対する強い期待を有しているものと考えるのが相当である。
2 以上のことを考慮すると、Xに対する本件夏季賞与についての本件支給日在籍要件の適用は、民法90条により排除されるべきであり、Xが本件夏季賞与の支給日においてY社に在籍していなかったことは、本件夏季賞与に係る賞与支払請求権の発生を妨げるものではない。
とても重要な裁判例ですのでしっかりと押さえておきましょう。
賞与の支給日在籍要件については、退職理由によって結論が異なりますので注意が必要です。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。