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今日は、賃金額が合意に至らず、労働契約の成立が否定された事案を見ていきましょう。
プロバンク(抗告)事件(東京高裁令和4年7月14日・労経速2493号31頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Y社との間で労働契約が成立したとして、労働契約上の地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、令和3年10月21日以降本案判決確定に至るまでの賃金及び賞与の仮払いを求める事案である。
原審は、被保全権利の疎明を欠くなどとして、Xの仮処分命令申立てをいずれも却下したので、Xが即時抗告した。
【裁判所の判断】
抗告棄却
【判例のポイント】
1 XとY社の間では、労働契約の締結に向けた交渉の過程で、賃金の額について合意できず、結局Xが就労するに至らなかったのであって、本件全資料によっても、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うこと」(労働契約法6条)についての合意があったとは認められない。
2 (原審判断)Xは、本件採用内定通知書の交付を受けた後、本件採用内定通知書の月額総支給額40万円に45時間相当の時間外手当が含まれるか否かを問い合わせ、月給30万2237円、時間外勤務手当9万7763円(時間外労働45時間に相当するもの)と記載された労働契約書に署名押印して提出せず、P氏からの複数回にわたる本件採用内定通知書の条件によることを承諾するか否かという趣旨の問い合わせに回答することなく、入社予定日の令和3年10月21日に労働契約書の月給「302,237円」等を削除し、「400,000円」と加筆した労働契約書をY社に提出したことからすれば、P氏が令和3年10月22日にXに提示した労働条件に基づく雇用契約の申込みを撤回するとメールで伝えるまでの間に、XがY社に対し本件採用内定通知書に対する承諾の意思表示をしたと認めることはできない。
したがって、XとY社との間に本件採用内定通知書記載の労働条件による労働契約が成立したと認めることはできない。
上記判例のポイント2を読む限り、労働条件について合意に至っていない以上、労働契約は成立していないと解さざるを得ないと思います。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。