継続雇用制度35 定年後再雇用の合意解除の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用の合意解除の有効性について見ていきましょう。

ヤマサン食品工業事件(富山地裁令和4年7月20日・労判1273号5頁)

【事案の概要】

本件は、各種山菜の缶詰などの製造販売、輸入業務等を業とするY社に定年まで勤務していた従業員Xが、Y社から、Xが譴責の懲戒処分を受けたことが、本件合意に定める本件合意の破棄条項の「就業規則の定めに抵触した場合」に該当することを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であるなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを請求したものである。

【裁判所の判断】

1 地位確認認容
→バックペイ認容

2 Y社はXに対し、172万6516円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社における継続雇用制度は、平成24年改正の趣旨を踏まえ、就業規則に定める基準年齢に達するまでは、本件労使協定に定める基準を適用することなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がない限り再雇用し、上記基準年齢に達した後は、本件労使協定に定める基準を満たす者に限って65歳まで再雇用する旨定めるものと解釈すべきである。

2 Xの懲戒事由該当行為が、職場の秩序を乱したとか情状が悪質であるなどの就業規則に定める解雇事由に相当するほどの事情であるとはいえない。
定年前約2年間におけるXの人事評価の結果を全体としてみると、Y社の人事評価制度やそれに基づく査定を前提としても、せいぜい標準ややや下回っているという程度であり、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえない
以上によれば、Xは、高年法及びY社の継続雇用制度に基づき、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情がない限り、令和2年7月20日の定年退職後もY社に再雇用される立場にあり、現に本件合意が締結され、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情も認められなかったのであるから、本件合意に定められた条件において、本件就業規則抵触条項に定める解除条件を充足したとして本件合意を解除し、Xを再雇用しないことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないから、Y社による本件解除は無効である。

定年後の再雇用拒否に関しても、解雇と同様の判断方法が採用されますので、そう簡単にはできません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。