おはようございます。
今日は、未収金の回収と退職金の支払合意に関する事案を見ていきましょう。
千田事件(大阪地裁令和4年5月20日・労判ジャーナル126号16頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社を定年退職したとして、雇用契約に基づき、退職金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 XとY社との間で、Xが未収金の回収を行い、未収金の回収が完了しなければ退職金を支払わない旨の合意が成立したかについて、仮にY社が主張するような未収金が生じていたとしても、それは基本的にはY社が組織として取引相手から回収を図るべきものであって、従業員が個人的に負担すべきものではないから、Xが、未収金の回収が完了しなければ退職金が支払われないことに同意するというような事態はやはり容易に想定し難いというべきであり、仮に、Y社が主張するような合意が存するとしても、そのような合意は、Xの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは到底いうことができず、無効というほかない。
労使間においては、仮に労働者の同意が存在したとしても、当該同意の対象に合理性が認められない場合には、自由な意思に基づかないものとして無効と判断されることがあります。
同意書にサインさえもらえば勝ち、みたいな発想は通用しませんのでご注意を。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。