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今日は、ラブホテル従業員の休憩時間の労働時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。
ホテルステーショングループ事件(東京地裁令和3年11月29日・労経速2476号29頁)
【事案の概要】
Xは、平成26年4月、Y社(都内で16店舗のラブホテルを経営)との間で労働契約を締結し、以降Y社の経営する複数の店舗において、客室清掃などを担当する「ルーム係」として勤務していた。
Xは、平成30年8月から令和2年8月頃までは、Y社の店舗の一つであるA(11部屋の客室を有する)で勤務し、通常は出勤してタイムカードを打刻した後、所定始業時刻以前の労働時間については賃金が支払われていなかった。
Xは、令和2年12月にY社を退職したが、令和3年2月に、未払賃金及び休業手当の支払を求めて本件訴訟を提起した。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、合計148万5130円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Xは、タイムカードを打刻してから所定始業時刻の午前10時までの間、リネン類の準備作業などを行っており、Xのこれらの作業の性質はY社の業務遂行そのものである。このことに加え、その作業がY社が労務管理のために導入したタイムカードの打刻後に行われていたこと、Y社の管理が及ぶ店舗内で行われていたものであること、ほぼ全ての出勤日で同じように行われ続けていたことなどからすると、Y社はこのような常態的な所定始業時刻前の作業の実態を当然に把握していたというべきところ、これを黙認し、業務遂行として利用していたともいえるから、上記作業はY社の包括的で黙示的な指示によって行われていたものと評価すべきである。
2 Xにおいては、ルーム係として客室清掃等の業務を行うことが労働契約上定められた業務であるところ、その業務を行う態様としては、Y社からの包括的な指揮命令に基づいて、フロント係からの連絡が客室の煙草処理や忘れ物の確認を行ったり、客室の空き状況や当日の混雑状況などを踏まえて必要があると自身らが判断すれば、客室清掃を行うといった状況であった。
そうすると、Xは、所定就業時間内においては、実作業に従事していない時間であっても、状況に応じてこれらの業務に取り掛からなければならない可能性がある状態に置かれていたというべきであり、その結果、原則的にルーム係控室に常に在室することを余儀なくされていたものと認められる。
そうすると、労働契約上の形式的な45分間の休憩時間や実際に昼食をとっていた時間を含めて、所定就業時間内は、Xには労働契約上の役務の提供が義務付けられていたというべきであり、労働からの解放が保障されていたとはいえない。
したがって、所定就業時間内は、全て労基法上の労働時間に当たるものと認められる。
上記判例のポイント2については、仕事の性質上、仮に実作業に従事していない時間があったとしても、1人体制では、労働からの解放は否定されてしまうのはやむを得ないところです。
日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。