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今日は、初回の契約期間満了に伴う雇止めが無効とされ、時間外割増賃金請求等の一部は認められたが、不法行為責任は否定された事案を見て行きましょう。
学校法人南陵学園事件(和歌山地裁令和2年12月4日・労経速2453号14頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結し、Y社が経営するi高等学校の開校準備業務に従事していたXが、Y社に対し、①契約期間満了時の平成28年3月31日に同年4月1日以降の契約の更新の申込みをY社が拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き無効であると主張して、本件雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び本件雇用契約による賃金請求権に基づき、同年4月1日から本判決確定の日まで毎月末日限り月額32万5300円の割合による賃金の支払を、②平成27年7月21日から平成28年12月2日までの間の時間外労働に対する賃金が支払われていないと主張して、雇用契約による賃金請求権に基づき、未払時間外賃金及び確定遅延損害金合計162万0018円+遅延損害金の支払を、③平成27年12月分から平成28年4月分までの教職調整手当、特別技能手当、扶養手当及び住居手当が支払われていないと主張して、雇用契約による賃金請求権に基づき、未払賃金41万6444円+遅延損害金の支払を、④自宅待機をXに命じ、本件各手当を不支給としたこと、本件雇止めをしたこと及びその後の交渉における対応はXに対する不法行為に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料300万円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。
【裁判所の判断】
①雇止めは無効
②Y社は、Xに対し、149万9258円+遅延損害金を支払え
③Y社は、Xに対し、41万6444円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Y社は、a高における就業規則及び賃金規程おいて、教職調整手当及び特別技能手当を労働基準法37条の割増賃金の一部として支給すると定めており、当時の本件高校における賃金規程においても同様の定めがあった可能性は否定できない。
しかしながら、Xは、Y社に対して就業規則の閲覧を求めていたが平成27年12月14日まで閲覧をすることができなかったと述べており、Y社において容易に提出することができると考えられる本件高校における当時の就業規則及び賃金規程が書証として提出されていないことに照らすと、Xの供述は信用することができる。したがって、本件高校において就業規則及び賃金規程が周知されていたと認めることはできず、本件雇用契約の内容となる就業規則及び賃金規程はないことになる。
2 本件雇用契約に関する雇用契約書では、契約更新の有無について「自動的に更新する」、「更新する場合があり得る」及び「契約の更新はしない」の選択肢から「更新する場合があり得る」が選択されていたとはいえ、本件高校が予定どおり開校される限り、本件雇用契約に関し、期間満了時である平成28年3月31日における更新は締結時から予定されていたものというべきであり、そのことについてXには合理的な期待があったと認められる。
3 E総監督及びA学園長がXの勤務態度には問題がなかったと述べていること、A学園長は、本件雇止めにおいて、XがY社の他の職員とコミュニケーションを取れていなかったことを最も重視したと述べるが、そのような事実を認めるに足りる証拠がないことを踏まえると、前記で検討した事実、高校生の教育に携わるという業務の特質等を総合的に評価したとしても、Y社が本件雇用契約の更新を拒絶することは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
上記判例のポイント1のように、容易に提出することができる就業規則や賃金規程を書証として提出しない場合には裁判所の心証はかなり悪いですね。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。