解雇351 コロナ禍での業務転換・縮小を理由とする整理解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍での業務転換・縮小を理由とする整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

森山(仮処分)事件(福岡地裁令和3年3月9日・労判1244号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されバス運転手として勤務していたXが、業務縮小を理由としてY社に解雇されたところ、当該解雇権の行使は合理的理由を欠き無効であるから、Xは労働契約上の権利を有する地位にあると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに賃金の仮払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
→賃金仮払い認容

【判例のポイント】

1 債務者(会社)は、新型コロナウイルス感染拡大によって、令和2年2月中旬以降、貸切バスの運行事業が全くできなくなり、同年3月中旬にはすべての運転手に休業要請を行う事態に陥ったこと、同年3月の売上は約399万円、同年4月の売上は約87万円であったこと、従業員の社会保険料の負担は月額150万円を超えていたこと、令和2年3月当時、雇用調整助成金がいついくら支給されるかも不透明な状況にあったこと等を考慮すると、その後、高速バス事業の為に運転手2名を新たに雇用したことを考慮しても、債務者において人員削減の必要性があったことは一応認められる

2 しかしながら、債務者は、令和2年3月17日のミーティングにおいて、人員削減の必要性に言及したものの、人員削減の規模や人選基準等は説明せず、希望退職者を募ることもないまま、翌日の幹部会で解雇対象者の人選を行い、解雇対象者から意見聴取を行うこともなく、直ちに解雇予告をしたことは拙速といわざるを得ず本件解雇の手続は相当性を欠くというべきである。

3 債権者が解雇の対象に選ばれたのは、高速バスの運転手として働く意思を表明しなかったことが理由とされているところ、債務者は、上記ミーティングにおいて、高速バス事業を開始することを告知し、運転手らに協力を求めたものの、高速バスによる事業計画を乗務員に示し、乗務の必要性を十分に説明したとは認められないうえ、観光バスと高速バスとでは運転手の勤務形態が大きく異なり家族の生活にも影響することを考慮すると、当該ミーティングの場で挙手しなかったことをもって直ちに高速バスの運転手として稼働する意思は一切ないものと即断し、解雇の対象とするのは人選の方法として合理的なものとは認め難い
そうすると、本件解雇は、客観的な合理性を欠き、社会通念上相当とはいえないから、無効といわざるを得ない。

人員削減の必要性は一応認められつつも、その他の要件で無効と判断されてしまいました。

上記判例のポイント2は整理解雇前に実施すべき基本的なプロセスですので、しっかりと押さえておきましょう。

解雇をする上で必要なプロセスについては、事前に必ず顧問弁護士に相談するようにしましょう。