労災23(小田急レストランシステム事件)

おはようございます。

メリークリスマス

今日と明日、福島県郡山市に行ってきます

弁護団の先生(通称、仙人)の別荘にお邪魔してきます

それでは、行ってきます!

みなさんも、素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

小田急レストランシステム事件(東京地裁平成21年5月20日・判タ1316号165頁)

【事案の概要】

Y社は、小田急電鉄沿線地域に洋食及び和食の専門店等各種飲食店を展開するとともに、小田急電鉄及び小田急百貨店の社員食堂、小田急電鉄の社内サービス等を運営する総合フードサービス事業を営む会社である。

Xは、Y社に入社し、その後、営業第1部第1事業付料理長に配置転換された。

Xは、ある日、自宅を出た後、配置転換後に勤務することとされていたイタリア料理店に出勤しないまま所在不明となり、そのころ、長野県内の雑木林で自殺した。

【裁判所の判断】

渋谷労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労働基準法及び労災保険法による労働者災害補償制度は、業務に内在する各種の危険が現実化して労働者が死亡した場合に、使用者等に過失がなくとも、その危険を負担して損失の補填の責任を負わせるべきであるとする危険責任の法理に基づくものであるから、業務と死亡との相当因果関係の有無は、その死亡が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべきである。

2 そして、精神障害の病因には、個体側の要因としての脆弱性と環境因としてのストレスがあり得るところ、上記の危険責任の法理にかんがみれば、業務の危険性の判断は、当該労働者と同種の平均的な労働者、すなわち、何らかの個体側の脆弱性を有しながらも、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の点で同種の者であって、特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準とすべきであり、このような意味での平均的労働者にとって、当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有しているといえ、特段の業務以外の心理的負荷及び個体側の要因のない場合には、業務と精神障害発症及び死亡との間に相当因果関係が認められると解するのが相当である

3 ここで、当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷とは、精神障害発症以前の6か月間等、一定期間のうちに同人が経験した出来事による心理的負荷に限定して検討されるべきものではないが、ある出来事による心理的負荷が時間の経過とともに受容されるという心理的過程を考慮して、その負荷の程度を判断すべきである

4 また、精神疾患を引き起こすストレス等に関する研究報告等をふまえるときは、心理的負荷を伴う複数の出来事が問題となる場合、これが相互に関連し一体となって精神障害の発症に寄与していると認められるのであれば、これらの出来事による心理的負荷を総合的に判断するのが相当である。

5 なお、厚生労働省基準局通達による「判断指針」は、その策定経緯や内容に照らして不合理なものとはいえず、業務と精神障害発症(及び死亡)との間の相当因果関係を判断するにあたっては、医学的知見に基づいた判断指針をふまえつつ、これを上記観点から修正して行うのが相当であると解される

6 Xのうつ病発症前の業務の心理的負荷の総合評価は「強」であり、うつ病の発症につながる業務以外の心理的負荷やXの個体側要因もないのであるから、判断指針によっても、Xのうつ病発症が同人の業務に起因するものであると認めることができる。
また、Xのうつ病発症後の業務の心理的負荷の強度についても、少なくとも「中」程度のものであって、うつ病に特徴的な希死念慮の他にXが自殺をするような要因・動機を認めるに足りる証拠はないから、Xの自殺についても、同人が従事した業務に内在する危険が現実化したものと評価するのが相当である。

この裁判例の特徴は、行政通達の判断指針を考慮して相当因果関係の有無を検討している点です。

また、うつ病発症後死亡前の業務も検討対象としている点も特徴的です。

従業員側としては、参考にすべき判例です。