解雇117(Principle One事件)

おはようございます。

さて、今日は、元オフィスマネージャーに対する解雇に関する裁判例を見てみましょう。

Principle One事件(東京地裁平成24年12月13日・労判1071号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Y社のXに対する整理解雇の意思表示が無効であると主張して、労働契約上の地位にあることの確認等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 整理解雇が有効であるために必要とされる①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性は、整理解雇について解雇権濫用法理の適否を総合判断するための評価根拠事実と評価障害事実とを類型化した要素と解すべきであり、①の人員削減の必要性の程度に応じ、当該企業の目的、従業員の数・構成、資産・負債、売上規模、組合の有無等の諸事情に照らして、②ないし④の各要素の充足の有無及び程度を検討し、当該整理解雇の効力について判断すべきであると解する

2 ・・・Y社は、本件解雇の時点において、経営危機に陥っており、早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破綻しかねないような危機的な状況にあったということができるから、人員削減の必要性があったというべきである。

3 Y社は、資本金1000万円、従業員数名の小規模会社であり、平成20年10月頃以降、経営状態の悪化に伴う危機的状況の下、人員削減の高度の必要性があり、社内にXの就労場所を確保することが著しく困難であった中、Xに対し、前件退職から前件判決確定までの間はXの労働契約上の地位を争いながらもその間も賃金全額を支払い、前件判決確定から本件解雇までの間は自宅待機を命じて就労義務を免除しつつもその間の賃金全額を支払って、第1回・第2回団体交渉の場等において、X及び組合の希望を聞きながら、Xに対し、転籍先を探して紹介しようとしていた経緯が認められる。以上の経緯に加えて、人員削減の高度の必要性がある中、Y社の企業規模に照らして選択し得る解雇回避措置の方法は極めて限定的なものとならざるを得ないことを考慮した場合、Y社は、本件解雇の時点において、可能な限りの解雇回避努力を尽くしたものと評価すべきである
この点、Xは、整理解雇に当たっては希望退職者の募集が不可欠であると主張するが、整理解雇に当たっての解雇回避努力の履行として希望退職者の募集が不可欠であるとまでいうことはできないし、本件解雇の時点において、Y社の従業員は4名にすぎず、必要最小限の人員態勢の下で業務を遂行していたことがうかがわれるから、希望退職者を募集することが現実的な選択肢として有り得たということができるか相当に疑問である
また、Xは、そのほかにも、ワークシェアリング、再就職支援等の措置を取るべきであったと主張するが、本件解雇の時点における人員削減の高度の必要性のほか、Y社の企業規模に照らした場合、Y社がX主張の解雇回避措置を取ることは、およそ現実的ではなかったといわざるを得ない

4要素説です。

整理解雇の事案では、通常、解雇回避措置を十分に取ったかが主要な争点となります。

本件では、人員削減の高度の必要性が認められ、かつ、企業規模が小さかったことから、通常、解雇回避措置として求められる希望退職者の募集等については、裁判所も大目に見てくれています。

4要素説の考え方は、上記判例のポイント1にまとめられており、非常に参考になりますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。