労災18(NTT東日本北海道支店事件)

おはようございます。

今日は、午前中、浜松で離婚調停です

午後は、静岡に戻ってきて裁判1件、会議1件、夜は顧問先の忘年会です

怒濤の1週間はまだまだ続きます!

今日も一日がんばります!!

さて、今日は労災に関する裁判例を見てみましょう。

NTT東日本北海道支店事件(札幌高裁平成22年8月10日・労判1012号5頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の札幌での研修期間中、夜に帰省し、翌々日、先祖の墓参りに出かけた際に急性心筋梗塞を発症し、死亡した(死亡当時58歳)。

Xは、平成5年5月の職場定期健診で心電図の異常が見つかっており、同年8月には冠状動脈血管形成術の入院手術を受けているほか、継続して診察・投薬を受けていた。

Xは、基礎疾患があったが、研修に際し、管理医と面談し、体調に特別の問題がなかったことから、研修に参加できると判断した。

【裁判所の判断】

旭川労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 「過重労働における健康障害防止のための産業医研修テキスト」には、日本循環器学会の虚血性心疾患の一次予防ガイドラインでのリスクファクターとして、加齢(男性45歳以上)、冠動脈疾患の家族歴、喫煙習慣、高血圧(収縮期血圧140mmHg以上又は拡張期血圧90mmHg以上)、高コレステロール値220mg/dl以上又はLDLコレステロール値140mg/dl以上)、精神的・肉体的ストレス等が挙げられている

2 産業医研修テキストには、ストレス因子として把握すべき就業態様として、労働時間、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務のほか、出張の多い業務等が挙げられている上、仕事のストレスの原因となる可能性のある主な要因として、作業内容及び方法について、仕事上の役割や責任がはっきりしていないこと、労働者の技術や技能が活用されていないこと等が、職場組織について、職場の意思決定に参加する機会がないこと、昇進や将来の技術や知識の獲得について情報がないこと等がそれぞれ挙げられ、また、ストレス対策のために事業場から提供を受けるべき組織レベルの情報として、事業場で進行しつつあるか又は将来予想される組織の変化について、終身雇用制の中止、早期退職勧奨や人員削減、大幅なアウトソーシング、その他経営方針の大きな変更等が、事業場や職場の組織・作業上の特徴や問題点について、技術の変化が激しいこと、リストラや雇用不安、単身赴任等がそれぞれ挙げられている

3 本件研修の参加、雇用形態の選択から本件研修中も継続していた異動の可能性等への不安による肉体的及び精神的ストレスがXの陳旧性心筋梗塞をその自然の経過を超えて増悪させ、急性の虚血性心臓疾患を発症させたものとみるのが相当であって、その間に相当因果関係の存在を肯定することができるというべきである
したがって、Xの死亡は、労災保険法にいう業務上の死亡に当たるというべきである。

結論は、一審と同じです。

地裁の裁判例は、労災⑫を参照してください。

一審判決において、すでに「雇用形態選択に端を発するストレス」が「Xの心疾患に悪影響を及ぼした」ことは指摘されていました。

控訴審では、これに加えて、仕事のストレスとして多種多様なものをあげている「産業医研修テキスト」に依拠している点は、新しいです。

労働者側としては、非常に有効な証拠となりますね