おはようございます。
さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。
エックスヴィン(ありがとうサービス)事件(大阪地裁平成22年1月25日・労判1012号74頁)
【事案の概要】
Y社は、フランチャイズチェーンシステムによる飲食店業の加盟店の募集及び加盟店の経営指導等を行う株式会社である。
Y社は、高齢者向け宅配弁当の業界で有力な企業であり、全国に約330店舗を展開している。
Xは、Y社との間で弁当宅配に関するフランチャイズ契約を締結していた者である。
Xは、本件フランチャイズ契約を締結する以前に弁当宅配事業を営んでいた経験はない。
本件フランチャイズ契約には、責任地域に関して、「Y社は、Xがフランチャイズ営業を行う地域を岡崎市エリアと定め、この地域においては、他の同一業態によるフランチャイズ営業を認めないものとする」との規定があり、競業避止義務に関して、「Xはフランチャイジーの権利をそうしたした後は、Y社と同一若しくは類似の商標ないしサービスマークを使用し、あるいは宅配クックワン・ツゥー・スリーフランチャイズシステムと同一若しくは類似の経営システムないし営業の形態・施設を持って3年間は事業をしてはならない」「競業避止義務に違反した場合、解除日直近の12ヶ月間・・・の店舗経営の実績に基づく平均月間営業総売上・・・に対し、本部ロイヤリティー相当額の36ヶ月分を支払う」との規定があった。
その後、本件フランチャイズ契約は、期間満了により終了した。
しかし、Xは、その後も、同一場所において、屋号のみ「ありがとうサービス」に変更して、弁当宅配業を継続している。
Y社は、Xらに対し、営業差止め、損害賠償の請求をした。
【裁判所の判断】
本件競業避止義務規定は、有効であり、営業の差止めおよび914万余円の損害賠償請求を認めた。
【判例のポイント】
1 XはY社の展開するフランチャイズ事業に対する信頼・評価を基に宣伝・広報活動等を行い、顧客を獲得することができたこと、Xは本件フランチャイズ契約の締結以前に弁当宅配事業を営んだ経験がなく、Y社のフランチャイズシステムなくして容易に事業に参入できたとは考え難いこと、Y社がXの責任地域(岡崎市エリア)において他の同一業態によるフランチャイズ営業を認めないことで、Xは岡崎市内においてY社のフランチャイズシステムを利用した高齢者向けの弁当宅配事業を独占的に展開することができたことなどからすれば、本件競業避止義務規定は、XがY社のフランチャイズシステムを利用して獲得・形成した顧客・商圏をそのまま流用することを防止し、Y社のフランチャイズシステムの顧客・商圏を保全する意義を持つもので、合理性を有する。
2 また、Y社は、メニューの内容や安否確認サービスなどにより、他の業者との差別化に意を用いており、Xはこのような具体的な工夫をそのまま利用することができたもので、本件の競業避止義務規定は、XがY社の有する高齢者宅配弁当事業のノウハウをそのまま流用することを防止し、営業秘密を保持する意義を持つものであり、この点からも合理性を有する。
3 他方、Xが被る営業の自由の制約等の不利益については、本件競業避止義務規定が、期間を契約終了後3年間とし、対象営業を同種の弁当宅配業等に限定していること、Y社は本件訴訟において、営業差止めの対象地域を岡崎市内に限定していることからすれば、Xの被る営業の自由の制約等の不利益は、相当程度緩和されている。したがって、本件の競業避止義務規定は、Xの営業の自由等を過度に制約するものとはいえず、公序良俗に違反し無効であるとはいえない。
このケースでは、裁判所は競業避止義務規定の効力を認めました。
基本的には、競業避止義務規定の趣旨目的の合理性およびXが被る不利益の程度を総合的に検討するという判断基準です。
とても参考になりますね。
やはり事前に顧問弁護士に相談し、対策を講じることが大切ですね。