労働時間71 会社専属運転手の待機時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社専属の運転手の労働時間に関する裁判例を見てみましょう。

ラッキー事件(東京地裁令和2年11月6日・労判ジャーナル110号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき、未払割増賃金等の支払、労働基準114条に基づき、上記割増賃金と同額の付加金等の支払、Y社の代表取締役であるBに対し、会社法429条に基づき、違法な長時間労働への従事及び割増賃金の不払による精神的苦痛を慰謝するための慰謝料として上記割増賃金相当額の賠償等の支払、Y社の会長と称されていたCに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、Bに対するのと同様に上記割増賃金相当額の賠償をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等請求一部認容、損害賠償等請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが本件車両外で待機していた場合については、Xは、Bを被告事務所に送った後、本件駐車場に本件車両を駐車し、その後は、Y社事務所にBを迎えに行くまでは、本件居宅等で待機するなどしていたところ、Bから事前又は待機開始後速やかに迎えの時刻について指示があり、その時刻にCを迎えに行けば足りることが多かったといえる。
もっとも、事前又は待機開始後速やかに同指示がないことも相当程度あったほか、同指示があったとしても、指示の内容が前倒しに変更されることもそれなりにあり、いつBから迎え時刻についての指示がされるか明らかではないことも一定程度あったといえる。
そうすると、Xが本件車両外で待機していた時間については、その一部について、待機時間の自由な利用が保障され、Y社の指揮命令下から離れていたというべきであり、Xが本件車両外で待機していた時間の長さも勘案すると、各稼働日ごとに1時間は労働時間に当たらない時間があったと認めるのが相当である。

2 XとY社の間では雇用契約書が取り交わされておらず、また、本件当時、Y社には就業規則や賃金規程も存在せず、XとY社の間で営業手当として支払われた金員が割増賃金として支払われる旨の合意がされていたことを直接に裏付ける証拠はない。
Y社らは、Xの採用時の面接で営業手当を上記の趣旨で支払う旨合意していたとも主張するが、これを裏付ける証拠はなく、Xは、その趣旨の説明を受けたことを否定する趣旨の供述している。加えて、Cは、営業手当について、基本給以外の種々の営業行為に直接的又は間接的な動きをするための手当であると認識していたなどと、Y社らの上記主張に沿わない内容の供述をしている。
そうすると、営業手当が割増賃金として支払われていたと認めることはできない

待機時間の労働時間該当性の問題は、他の業種でも問題となります。

労働から解放されていたかを判断することになりますが、かなり微妙なケースも中にはあります。

この分野も事前の準備・運用が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理することが求めれています。