解雇112(ニューロング事件)

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さて、今日は、退職届提出後の懲戒解雇の効力と退職金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ニューロング事件(東京地裁平成24年10月11日・労判1067号63頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、平成17年12月5日に、同月19日をもって退職する旨の退職届を提出したにもかかわらず、Y社から同月9日付けで懲戒解雇されたことから、これが無効であり、退職届に基づく退職が有効であると主張して、退職金等を請求した事案である。

本件懲戒解雇理由は、Y社が海外(アラブ首長国連合ドバイ)に設置した関連会社のDirector職に兼務していた海外事業部部長であるXに対する横領等の背信行為、無許可で禁止されている競合会社と取引を行ったこと、競業準備行為等である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

Y社に対し退職金及び役付給付金1466万1483円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 一般に、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を科するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である
しかし、「無断で個人の会社をニューロング・ドバイ店内に設立したこと」という告知内容は、自らの会社の設立を非違行為の核心とするものであるところ、いかにこれを実質的に解釈したとしても、それが「Y社の了解を取らずにC社の業務を行い、資金を流用したこと」という事由と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものと解することはできない。

2 ・・・以上によれば、Xには、本件取引中止宣言後もY社に隠れてB社と取引を行ったという点が、一応、懲戒解雇事由として存在するということができる。
・・・本件取引中止宣言後に、Y社の方針に反して、個別にY社代表者の承認を得ることなくB社と取引していたことが、本件取引中止宣言に反する行為であり、Y社の企業秩序維持との関係で問題のある行動であったことは事実であるものの、他方で、顧客に対する信用維持やニューロング・ドバイの経営維持のため、Y社代表者の意に反することになるというリスクを冒してもなお、あえてB社との間で取引を継続せざるを得なかったという側面があったこともまた事実であるということができる
以上の認定に加え、本件懲戒解雇は、Xによる退職の意思表示がY社に到達した後、それが効力を生じる前に、急遽なされたものであること、本件懲戒解雇事由について、Xに弁明の機会が与えられていなかったことを併せ考えると、本件取引中止宣言後もY社に隠れてB社と取引を行ったという懲戒解雇事由が、34年8か月というXの多年の継続の功を抹消してしまう程度に重大なものということまではできないし、Xを懲戒解雇として退職金を不支給とすることが、Y社の規律維持上やむを得ない場合にあたるということもできない。

3 Xは、この他に功労加給金及び特別加給金の請求権を主張しているが、功労加給金については、Y社代表者が、直属所属長の申告に基づき、その裁量によって、特に功労ありと認めた従業員に対して支給するものであるから、Xにその請求権はないというほかはない。

まず、懲戒解雇事由の追加主張に関する規範は参考にしてください。

次に、退職金の不支給に関する争いの場合は、労働者側からすれば、どれだけ酌むべき事情を挙げられるかにかかっています。 丁寧に事実を主張・立証していくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。