継続雇用制度14(JALメンテナンスサービス事件)

おはようございます。

今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

JALメンテナンスサービス事件(平成22年4月13日・判時2089号154頁)

【事案の概要】

Y社は、航空機整備用工器具類の受払、貸出及び保管に関する事業等を目的とする会社であり、「JMS」と略称されることがある。

X1は、Y社に、57歳で入社し、X2は、54歳で入社し、それぞれ羽田事業所で器材サービス部器材グル―プに所属して、上記工器具類の受払、貸出等の業務を担当していた。

Y社では、従業員は、60歳(定年)までが一般職、定年後65歳までが嘱託社員、それ以上が特別嘱託社員と扱われている。

Xらは、Y社との間で、特別嘱託雇用契約を締結した。

Y社は、Xらを、特別嘱託雇用の更新をする予定はなく、契約期間満了により終了させると通告し、雇止めをした。

Xらは、特別嘱託社員についてもXらの希望に応じて雇用契約が更新されるという労使慣行が存在する、この慣行は雇用契約の内容になっていたのであり、仮にそうでなくても、Xらは雇用契約が更新されることについて合理的期待を有していたものであり、雇止めは無効であると主張した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 労使慣行とは、労働条件等について就業規則等の成文の規範に基づかない一般的取扱い等が長い間反復・継続して行われ、それが使用者と労働者の双方に対して事実上の行為準則として機能するものをいう。
このような取扱い等が、その反復・継続によって雇用契約の内容となっているというべき場合には、その取扱い等には労働契約の効力が認められる。

2 Y社は、平成15年から17年にかけてのころ、エイジフリーの実現等を積極的に広報して就業者の上限年齢を撤廃し(再雇用期間を67歳までに限定することを見直した)、そのころ、特別嘱託社員を増員している。
しかし、従業員には、特別嘱託社員として再雇用されなかった者や、再雇用されても67歳までに退職した者も少なくないし、特別嘱託社員数は、平成18年以降減少に転じており、現在は全社で3人にすぎない。そうだとすると、時間の長短は相対的なものではあるが、3年程度の間に生じた事実によって、ただちに「一般的取扱い等が長い間反復・継続して行われた」とまで認めることはできない

3 特別嘱託社員は、60歳定年後さらに5年経過後の、原則として6か月間の有期雇用契約にすぎず、従業員には特別嘱託社員として再雇用されない者もあり、されたとしても67歳に達する前に退職した者も少なくない。
このような事実によれば、上記期待は、Xらの主観的なものにすぎず、Y社に契約更新(ないし新たな再雇用契約の締結)を事実上義務付けるような強い効果を有するものとは認められない。

この事案は、労使慣行に関する裁判例として区分すべきでしょうが、継続雇用制度のグループに入れておきます。

この裁判例では、労使慣行の存否について、上記判例のポイント1のように定義づけました。

菅野先生の基本書を参考にしたものと思われます。

労使慣行は、そう簡単には認められません。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。