おはようございます。
さて、今日は女性グラフィックデザイン従業員による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
P社事件(東京地裁平成24年12月27日・労判1069号21頁)
【事案の概要】
本件は、Y社で稼働していたXが、2年分の時間外労働等に対する割増賃金及び付加金、不法行為(男女差別、昇給差別及び賞与の不当カット)に基づく損害賠償としての差額賃金相当額等の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社に対し、約800万円の未払い残業代の支払いを命じた
Y社に対し、800万円の付加金の支払いを命じた
【判例のポイント】
1 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいい、この労働時間に該当するか否かは、使用者の指揮命令下におかれているか否かにより客観的に定まるところ、使用者には、労働者の労働時間を適正に把握する義務が課されていると解されることからすれば、本件のように使用者がタイムカードによって労働時間を記録、管理していた場合には、タイムカードに記録された時刻を基準に出勤の有無及び実労働時間を推定することが相当である。ただし、上記推定は事実上のものであるから、他により客観的かつ合理的な証拠が存在する場合には、当該証拠により出勤の有無及び実労働時間を認定することが相当である。
2 本件の請求期間におけるXの退勤時刻は、基本的にはタイムカード記録時刻により、それを超えてXが労務を提供していたことを認めるに足りる客観的な証拠がある場合はそれにより認定することが相当である。具体的には、Xのパソコン上のデータ保存記録(タイムスタンプ)及びメール送信記録に照らし、タイムカード記録時刻ではなく、最終のデータ保存時刻又はメール送信時刻(ただし、X主張の退勤時刻がそれよりも前である場合は、X主張の退勤時刻)に退勤したものと認めることが相当である。
3 本件において、Xの休憩時間を直接に示す客観的な証拠はないから、間接事実及び経験則により、休憩時間の概ねの傾向を推認するほかはない。
この点、Xは、担当していた業務量からいって、少なくとも他従業員の2倍の労働時間が必要であった等として、平日勤務における休憩時間を0、休日勤務における休憩時間を30分から1時間と主張し、証拠中にはこれに沿う部分がある。しかし、1年10か月に及ぶ請求期間を通じて、ほとんど休憩を取らずに1週間に100時間近い実労働(1週当たり60時間程度の時間外労働)に連続して従事するなどということはおよそ不可能であるし、Y社における業務内容にかんがみれば、労基法上義務づけられている休憩時間すら取得できないほど業務が過密であったり、即時対応のための待機を強いられたりしていたとは認めがたい。結局、労基法上義務付けられている程度の休憩は取得していたものとして、拘束時間が6時間を超えて8時間45分までであれば45分の、8時間45分を超えていれば1時間の休憩時間があったものと認めることが相当である。
労働時間の考え方について裁判所の考え方がわかりやすく記載されていますので、参考にしてください。
付加金がほぼ満額認められていますね。 えらい金額になっています・・・。
経営者のみなさん、労働時間の管理はちゃんとしておきましょう。 義務ですので。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。