従業員に対する損害賠償請求9 従業員の交際禁止合意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、従業員の私的交際を禁止する合意に違反したことを理由とする違約金請求が棄却された裁判例を見てみましょう。

有限会社MIBプランニング事件(大阪地裁令和2年10月19日・労経速2439号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXに対し、従業員の私的交際を禁止する合意に違反したことを理由とする違約金・損害賠償金合計140万円+遅延損害金を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社が雇用契約を締結したこと及びY社の求めによりXが本件同意書に署名したこと、Y社が本件始末書を作成したこと及びその時点でY社がXに対する違約金200万円の請求を控えたことは当事者間に争いがない。
しかるに、本件同意書は、使用者であるY社が被用者であるXに対して私的交際を禁止し、これに違反した場合には違約金200万円を請求し、Xはこれを支払う旨合意するものであるところ、これは、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反しており、無効である。
また、人が交際するかどうか、誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならないところ、本件同意書は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において、被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから、公序良俗に反し、無効というべきである。

英会話教室やキャバクラ等で同様の契約内容を見かけますね。

違約金等の請求をされると労基法16条の問題として争われ、契約違反で解雇されると、地位確認が争われます。

契約内容については事前に顧問弁護士に相談することをお勧めいたします。