おはようございます。
今日は、勉強会の労働基準法上の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。
前原鎔断事件(大阪地裁令和2年3月3日・労判ジャーナル101号38頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していたXが、Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金等の支払を、Y社の従業員らからパワハラ行為を受けたと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金等の支払を、それぞれ求めた事案である。
【裁判所の判断】
地位確認請求棄却
損害賠償請求棄却
割増賃金支払請求一部認容
【判例のポイント】
1 確かに、「勉強会」は、本件組合の提案を受けて開催されるようになったものではあるものの、Xに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されておらず、また、Xは、D取締役が入社した平成20年の時点において、既に、Y社の従業員らから、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されていたものであり、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定如何にかかわるのは明らかであり、加えて、Y社の就業規則には、「会社は、従業員に対し、業務上必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う」、「従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受講しなければならない」と規定されていることをも併せ鑑みれば、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間、すなわち労働基準法上の労働時間に該当すると解するのが相当である。
勉強会、研修会の労働時間性については昔から争点となってきましたが、いまだに訴訟上問題となります。
参加が任意なのか、(事実上も含め)強制されていたのかが基本的な判断基準となります。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。