派遣労働14(トルコ航空ほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣法違反と黙示の労働契約の成否に関する裁判例を見てみましょう。

トルコ航空ほか事件(東京地裁平成24年12月5日・労経速2173号3頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元に1年間の有期契約で雇用され、サービスアグリーメント(SA、労働者派遣契約)に基づき派遣先であるY社に派遣された労働者らが、労働組合を結成して、待遇改善を求めたところ、Y社が、中途解約条項に基づきSAを途中解約し、派遣元が、有期労働契約の解約条項(SAが終了した場合、期間途中で解雇できる)に基づき期間途中で解雇したため、Xらが、①派遣先に対し、黙示の雇用契約関係の存在確認、②派遣元に対し、派遣先によるSAの解除は、派遣法27条(派遣労働者の正当な組合活動を理由とする派遣契約の解除禁止)等に違反し無効であり、SAの解除の有効性を前提とする本件解雇も無効であるとして提訴し、③派遣元が、訴訟係属中に派遣労働契約を期間満了により雇止めしたため、雇止めの効力が争われた事案である。

【裁判所の判断】

Y社との黙示の雇用契約は成立していたとは認められない。

本件派遣契約解除は派遣法27条に違反し無効。

派遣元のXらに対する解雇も無効。

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 XらとY社との間に黙示の雇用契約が成立するためには、①採用時の状況、②指揮命令及び労務提供の態様、③人事労務管理の態様、⑤対価としての賃金支払の態様等に照らして、両者間に雇用契約関係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その実質関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合致があることを必要と解するのが相当であり、労働者派遣においては、労働者に対する労務の具体的指揮命令は、派遣先会社が行うことが予定されているから、黙示の雇用契約の成立が認められるためには、派遣元会社が名目的存在に過ぎず、労働者の採否の決定、労務提供の態様、人事労務管理の態様、賃金額の決定等が派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要というべきである

2 Xらは、自身が派遣元と雇用契約を締結した上で、派遣労働者としてY社で稼働していることについて十分了解していたというべきであり、またXらの業務に派遣期間の制限(労働者派遣法40条の2第2項)が及ぶとしても、同40条の3を根拠に雇用契約上の地位確認請求が発生すると解する余地はないし、このような事情があるからといって、黙示の雇用契約の成否に影響を与える余地もない。

3 Xらと派遣元の雇用契約については、契約更新手続が形骸化していたことをうかがわせる事情を認めることはできないが、旅客運送業務を営むY社における恒常的、基幹的業務に従事していたこと、Xらの中には少なくとも7回にわたって雇用契約が更新され継続してY社に派遣されていた者がいたことは、Xらと派遣元との間の雇用契約につき雇用継続に対する合理的な期待があるとしてその雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるとの主張を肯定する方向に一応傾く余地がないではないが、雇用主である派遣元が就業場所となることが予定されておらず、労働者派遣契約がなければ実際の就業場所を確保することができないという派遣労働の特徴、及び企業間の商取引である労働者派遣契約に更新の期待権や更新義務を観念し得ないことも併せかんがみれば、Xらの雇用契約(派遣労働契約)の継続に対する期待は、労働者派遣法の趣旨及び派遣労働の特徴に照らし、合理性を有さず、保護すべきものとはいえない。これは、Y社による本件SAの中途解約が無効と解される本件でも同様である。

派遣契約に関する裁判例が続きます。

派遣契約の特徴から更新の期待権や更新義務を否定しています。

やはり一般の有期雇用契約の場合の法理論を派遣契約に応用することはかなりハードルが高いですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。