おはようございます。
さて、今日は、派遣契約の解除と派遣先会社の不法行為責任に関する裁判例を見てみしょう。
三菱電機事件(名古屋高裁平成25年1月25日・労経速2174号3頁)
【事案の概要】
本件は、派遣会社からY社に派遣労働者として派遣される形式で就業していたXらが、Y社が各派遣会社に対して労働者派遣契約を解約した結果、派遣会社からそれぞれ解雇されたことに関し、Xらの実質的な雇用主はY社であり、Y社とXらとの間に黙示の雇用契約が成立していたものであり、派遣会社らによる解雇は理由がなく、実質的にY社が主導したもので共同不法行為に当たるなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び各賃金等の支払を求めた事案である。
原審(名古屋地裁平成23年11月2日判決)は、Y社との雇用契約の成立は否定したが、解雇について派遣先が不法行為責任を負い、また、一部派遣元も共同不法行為責任を負うとした。
【裁判所の判断】
Y社との黙示の雇用契約の成立は認められない。
Xらのうち2名については派遣先の不法行為を否定した。
【判例のポイント】
1 XらとY社との間に黙示の労働契約が成立しているか否かは、具体的には、派遣会社らが名目的な存在にすぎず、Y社が、Xらの採用や解雇、賃金その他の雇用条件の決定、職場配置を含む具体的な就業態様の決定、懲戒等を事実上行っているなど、Xらの人事労務管理等を、Y社が事実上支配しているといえるような特段の事情があるか否かによって判断すべきであり、Y社の作業上の指揮命令権の根拠いかんによって判断されるべきものではない。
2 Y社はX2の採用決定やX2、X3の各移籍に関与しておらず、また派遣会社らは、労働者に対する賃金は自ら定めており(時間単位に標準作業時間を乗じて算出する等の)請負代金又は派遣料の算出方法をもって、Y社がXらの賃金を事実上決定しているということはできず、就業内容決定をY社が行うことは、、労働者派遣においていわば当然であって、Xら派遣労働者の具体的な配置について、派遣会社らの承諾を得て決定していたのであるから、派遣会社らがXらの就業内容(配置)を決定していないということはできない。
3 Y社には、Xらの雇用の維持又は安定について一定の配慮をすることが一般的に要請されており、Y社のした派遣会社らとの間の労働者派遣契約の本件中途契約等について、上記配慮を欠き、その時期や態様などにおいてXらの雇用の維持または安定に対する合理的な期待をいたずらに損なうようなことがあった場合には、Y社による中途解約等が上記の信義則上の配慮義務に違反するものとして、Xらに対する不法行為となる。
4 X1に係るY社による労働者派遣個別契約の中途解約は、Y社において、平成20年11月下旬に派遣会社との労働者派遣個別契約を同年12月1日から更新する旨の契約を締結してから、わずか10日程しか経過していない時期におけるものであり、(平成20年11月後半は、すでにリーマンショックの影響により大幅な生産調整を行う必要が生じてきた時期であり、その時点で更新されたのであるから、少なくとも更新後の派遣期間中は派遣労働が継続されるものとの)X1の合理的期待を侵害するものであって、派遣会社から労働者派遣個別契約の定めにしたがってX1の新たな就業機会の確保を要請されたにもかかわらず、これに応じなかったのであり、Y社は派遣労働者であるXの雇用の維持又は安定に対する合理的な期待をいたずらに損なうことがないようにするとの信義則上の配慮を欠いたものというほかなく、信義則上の配慮義務に違反するものとして、X1に対する不法行為となる。
5 労働者派遣法40条の4に基づく直接雇用申込義務は、派遣元事業主から、抵触日の前日までに、厚生労働省令で定める方法により、当該抵触日以降継続して労働者派遣を行わない旨の通知を受けた場合に生じるところ、Y社が、派遣会社らから上記通知を受けたと認めるに足りる証拠はないから、Xらの主張は前提を欠くものである。また、上記義務は、抵触日の前日までに当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望する者に対して雇用契約の申込みを行うべき公法上の義務にすぎないから、Xらの就業を継続させたことのみをもって黙示の雇用契約の成立を推認できるものでないことは明らかである。
黙示の労働契約の成立、派遣法40条の4の法的性格について判断しています。
特に新しい内容ではありませんが、参考にしてください。
派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。