おはようございます。
今日は、組合員の未払残業代を議題とする団交において、未払残業代が発生していないとする理由を具体的に説明しなかったこと、および同人のタイムカードの写しを提供しない理由を説明しなかったことがいずれも不当労働行為とされた事案を見てみましょう。
光明土地改良区事件(大阪府労委平成31年1月11日・労判1218号92頁)
【事案の概要】
本件は、組合員の未払残業代を議題とする団交において、未払残業代が発生していないとする理由を具体的に説明しなかったこと、および同人のタイムカードの写しを提供しない理由を説明しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
いずれも不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 29.7.20団交において、組合が、A2組合員の未払残業代が発生していない根拠として、管理監督者であること、固定残業代として既に支払っていること、残業は一切していなかったことの3点しか考えられないが、どれに当たるのか尋ねたのに対し、Y社は、残業に必要な手続を踏んでいないことを付け加え、4つとも当てはまる場合もあると思う旨等回答していることが認められる。
Y社は、上記をもって誠実な回答を行った旨主張するが、法人は、そもそも残業代を支払っていない旨答えており、残業代を支払わなかった理由を具体的に答えることが可能であったのだから、一般論で、しかも4つとも当てはまる場合もあると思うなどと答えたことをもって、誠実に対応したということはできない。
2 29.7.20団交において、Y社が、給与規程に基づき残業手当を支払わず、管理職手当を支払っている旨述べたことに対し、組合は、①給与規程には、管理職手当について、固定残業代を含む旨の記載は一切なく、何を根拠に法人が固定残業代と言うのか不明である旨、②管理職手当等が固定残業代には当たらないという認識であるが、残業代を請求するにしても、きちんと計算をして請求したいと考えている旨等述べていることからすると、29.7.20団交で、組合は、本件タイムカードの写しを要求する根拠を具体的に述べていると解するのが相当である。
組合は、本件タイムカードの写しを要求する根拠を具体的に説明しているといえるにもかかわらず、Y社が、本件タイムカードの写しを提供すべき理由を理解できないと繰り返すだけであったことは、組合の主張に対して、提供できない理由を具体的に説明したとみることはできず、Yのこのような回答は不誠実といわざるを得ない。
3 29.7.20団交において、Y社が、A2組合員の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を一切行わなかったこと及びA2組合員のタイムカードの写しを提供できない理由の説明を行うことなく、A2組合員のタイムカードの写しの提供を拒否したことは、誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する誠実団交義務を尽くしたとはいうことができないことから、不誠実団交に当たるといえ、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
会社側が「タイムカードの写しを提供すべき理由を理解できない」という主張を繰り返しているようですが、全く生産的ではなく、また、このような主張が認められる可能性はゼロです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。