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今日は、背信行為等を理由とする退職金不支給の成否に関する裁判例を見てみましょう。
インタアクト事件(東京地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル95号34頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、平成28年度冬季の賞与が未払であるとして、労働契約に基づく賞与支払い請求として約49万円等の支払を求めるとともに、Y社を退職したにもかかわらず退職金が支払われないとして、退職金規程に基づき退職金約70万円等の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払賞与等支払請求は棄却
退職金等支払請求は認容
【判例のポイント】
1 XがY社を退職したのが平成28年12月9日であると認められるのに対し、平成28年度冬季賞与支給日が同月13日と設定されていることから、Xは「支給日に在籍している社員」には該当せず、また、Y社における冬季賞与支給日は、必ずしも12月9日以前とされていたわけではなく、その他に、Y社がXを支給日在籍社員として取り扱わないことが権利濫用に該当することを裏付ける事実を認めるに足りる証拠はないから、Xは、平成28年度冬季賞与を請求できる権利を有しない。
2 Y社が本件背信行為として主張するものの多くは、そもそも懲戒解雇事由に該当しないものである上、仮に懲戒解雇事由に該当しうるものが存在するとしてもその内容はXが担当していた業務遂行に関する問題であってY社の組織維持に直接影響するものであるとか刑事処罰の対象になるといった性質のものではなく、これについてY社が具体的な改善指導や処分を行ったことがないばかりか、Y社においても業務フローやマニュアルの作成といった従業員の執務体制や執務環境に関する適切な対応を行っていなかったのであり、また、Y社の退職金規程の内容からすれば、Y社における退職金の基本的な性質が賃金であると解されること等から、Xについて、Y社における勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できず、Y社は、Xに対して、退職金規程に従って退職金を支払う義務を負う。
判例のポイント1は、非常にベーシックな論点ですが、支給日それ自体に争いがあると、今回のケースのようになってしまいます。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。