おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、仮眠時間の労働時間該当性に関する裁判例を見てみましょう。
S社事件(東京地裁令和元年7月24日・労判ジャーナル93号28頁)
【事案の概要】
本件は、建物の総合管理業務等を業とするY社の正社員として、ホテルの設備管理業務等に従事していたXらが、Y社に対し、平成26年7月1日から平成28年7月31日までの間における時間外労働に係る賃金の支払い等を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 Bシフトの仮眠時間が労働時間に当たるかについて、Xらは、午前零時から午前6時までの間は、仮眠時間として本件ホテル内の仮眠室(中央監視室及び蓄電池室)において仮眠をとることとなっていたものの、中央監視室には、設備管理モニターが3台設置され、仮眠時間中でも設備に以上が発生すれば、警報機が鳴る仕組みになっていたこと等の点を含む仮眠室の状況、クレーム表や日報からうかがわれるBシフト勤務担当者の実作業の状況や頻度等に照らせば、XらはY社と本件ホテルとの間の業務委託契約に基づき、Y社従業員として、本件ホテルに対し、労働契約上、役務を提供することが義務付けられており、使用者であるY社の指揮命令下に置かれていたものと評価するのが相当である。
2 変形労働時間制の有効性について、当該期間に該当する就業規則7条2項において、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制とし、所定労働時間について、1か月を平均して1週間40時間を超えない範囲で、1日8時間、1週間40時間を超えて勤務を命じることができる旨定められていることが認められるが、同就業規則においては、勤務パターンごとの始業終業時刻、勤務パターンの組み合わせ、勤務割表(シフト表)の作成手続及び周知手続が全く定められておらず、Xらの実際の勤務時間はシフト表により定められていたことが認められ、また、シフト表自体は、毎月1日より前に従業員の希望を元に勤務日及び勤務時間を特定して作成されていたものの、シフト表からは、休憩時間や仮眠時間は明らかではないから、シフト表の記載に関わらず、単位休憩時間や仮眠時間は明らかではないから、シフト表の記載に関わらず、単位期間における各日、各週の労働時間が就業規則において特定されていたと評価することはできず、したがって、当該期間におけるY社の変形労働時間の定めは、労基法32条の2の要件を充足しないものとして無効である。
変形労働時間制を採用していながら、法定要件を満たしていない例が後を絶ちません。
固定残業制度同様、導入するのであれば、中途半端にならないことがとても重要です。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。