賃金3(ゴムノイナキ事件)

おはようございます。

さて、今日は、昨日に引き続き割増賃金に関する裁判例を見ていきます。

ゴムノナイキ事件(大阪高裁平成17年12月1日・労判933号69頁)

【判例のポイント】

1 労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であると解すべきところ(最高裁判所平成12年3月9日判決参照)、Xの超過勤務自体、明示の職務命令に基づくものではなく、その日に行わなければならない業務が終業時刻までに終了しないためやむなく終業時刻以降も残業せざるを得ないという性質のものであるため、Xの作業のやり方等によって、残業の有無や時間が大きく左右されることからすれば、退社時刻から直ちに超過勤務時間が算出できるものではない

 しかし、他方、タイムカード等による出退勤管理をしていなかったのは、専らY社の責任によるもので、これをもってXに不利益に扱うべきではないし、Y社自身、休日出勤・残業許可願を提出せずに残業している従業員の存在を把握しながら、これを放置していたことがうかがわれることなどからすると、時間外労働の立証が全くされていないとして扱うのは相当ではない

3 以上によれば、本件で提出された全証拠から総合判断して、ある程度概括的に時間外労働時間を推認するほかない
Xが主張する午後7時30分以降の業務は毎日発生するものではないこと、X自身、繁忙期以外の時期には、やろうと思えば午後10時には退社できたことを自認していること、Xの上司である営業所所長作成の文書では、Xは、午後9~12時頃には退社していた旨の記載があること等から、Xは、平成13年5月以降平成14年6月までの間、平均して午後9時までは就労しており、同就労については、超過勤務手当の対象となるとされ、概ね午後7時30分までの超過勤務を認定した一審判決が変更された。

4 Xは、休日に出勤していたとしても、休日に超過勤務手当の対象となる労基法上の労働がされたとまでは認めがたい。

5 Y社自身、タイムカードを導入しないなど自ら出退勤について手当が支給されずに放置されていたこと、現に、労働基準監督署からその旨の是正勧告も受けていることなどの事情を考慮すると、Y社が主張する事由を考慮しても、付加金の支払いを命ずる

タイムカード等により労働時間の管理が正確になされていない場合には、日記やメモにより始業時間と終業時間を残しておきましょう。

従業員のみなさんは、この裁判例を大いに参考にするべきです。

労働時間の管理をしっかりしていない社長は、対策を講じましょう。

多くの裁判例を見ていると、いろんなヒントが出てきます。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。