従業員に対する損害賠償請求15 給与等の不正受給に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、給与等の不正受給に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

全日本吹奏楽連盟事件(東京地裁令和6年2月21日・労判ジャーナル150号22頁)

【事案の概要】

本件は、本訴において、Y社が、Y社の事務局長であったB及び事務局次長であったCにおいて、平成22年4月から令和元年12月までの間、正規の給与及び賞与の額を上回る金員を不正に受給していたとして、B及びCに対し、共同不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、連帯して、約1億5814円等の支払を求め、反訴において、B及びCが、Y社による懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求認容

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 本件期間中、Bは、Cの実支給額についてD前理事長及ぶE理事長の決裁を得ていなかったにもかかわらず、事務局長として、法人の金員出納の決裁と管理を行う権限を有する地位を利用して、Y社の預金口座からB及びCの各預金口座に、実支給額から控除額を控除した後の差引支払額を振込送金し、B及びCにおいて実支給額と総会用給与表の給与等との差額を不法に領得しY社に同額の損害を与えたものと認められるから、Bについて不法行為が成立し、また、本件期間中、Cは、Bが実支給額につきD前理事長らの承認を得ていないかもしれないとの認識を有していたにもかかわらず、BがB及びCの実支給額の支給を行うのを黙認し、更には実支給額の秘匿に協力するなどし、B及びCにおいて実支給額と総会用給与表記欄の給与等の額との差額を不法に領得しY社に同額の損害を与えたものと認められ、不法行為が成立するというべきであり、Bの不法行為とCの不法行為とが客観的に関連することは明らかであるから、共同不法行為に当たると認められる。

平成22年から令和元年までの約10年間ですから、ちりつもの結果、とんでもない金額になっています。

弁済能力があるのかは別の問題ですが。

また、場合によっては刑事事件にもなり得ますね。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。