おはようございます。
今日は、諭旨解雇及び懲戒解雇が無効である場合における諭旨解雇を社内に公示した行為の不法行為該当性について見ていきましょう。
東和産業事件(東京地裁令和6年5月30日・労判ジャーナル149号37頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社から令和2年12月15日に受けた懲戒処分としての譴責処分に関し、本件譴責処分が無効であることの確認を求めるとともに、違法な本件譴責処分をしてY社の社内に公示したY社には不法行為責任が成立すると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料100万円等の支払を求め、また、Y社から令和3年5月18日に受けた諭旨解雇処分及び同年6月1日に受けた懲戒解雇処分に関し、Y社に対し、本件各解雇処分には懲戒権及び解雇権を濫用した違法があると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、本件各解雇処分後の未払賃金等の支払を求めるとともに、違法な本件諭旨解雇を社内に公示したY社はXの名誉を毀損したものであると主張して、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料100万円等の支払と、民放723条に基づく名誉を回復させるための処分として、Y社の全従業員が加入するメーリングリストへの謝罪広告の投稿を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
慰謝料請求一部認容
【判例のポイント】
1 本件各解雇処分は権利濫用の違法があるとはいえるものの、本件各解雇処分以前においてY社がXの非違行為に対して十分な調査や注意、指導を行うことができなかったことについては、XがY社の指示に従わずにe所長やd次長に対して日報を提出しないなど、Y社がXの営業活動を十分に認識する機会を得ることができなかったことも一つの要因となっていたものというべきであること等から、本件各解雇処分が著しく相当性を欠き、Xに対する不法行為を構成するものということはできない。
2 Y社は4日間程度、Y社がXを本件諭旨解雇に処したことについて、公示したことが認められ、そして、本件諭旨解雇が無効であることからすると、Y社による上記公示行為は、たとえ本件就業規則に基づき行われたものであるとしても、Xが諭旨解雇に処せられるべき非違行為を行った者であるとの真実に反する事実がY社の社内に公表され、Xの社会的評価を低下させたものといえるから、Xの名誉を毀損したものとして不法行為を構成するといわざるを得ず、慰謝料としては、公示方法が社内のみであり短時間の公示であったことなどの事情を考慮すれば、10万円をもって相当と認めるが、他方、Xの名誉回復処分として、謝罪広告の投稿を命ずる必要まではない。
上記判例のポイント2は、しっかりと押さえておきましょう。
懲戒処分が無効と判断された場合には、公示した行為が違法とされますのでご注意ください。
解雇を有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。