Daily Archives: 2025年3月31日

賃金289 窃盗(荷抜き)を行ったことを理由とする未払退職金等支払請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、窃盗(荷抜き)を行ったことを理由とする未払退職金等支払請求が棄却された事案を見ていきましょう。

焼津漁協協同組合事件(静岡地裁令和6年5月23日・労判ジャーナル149号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元職員Xが、Y社に対し、労働契約に基づき、退職金及び手当の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 顧問弁護士等を構成員とする調査委員会が、聴き取り調査を行った結果、Y社の市場部次長であるCを含む複数の従業員が、約3年間にわたり荷抜きをしていたことが確認され、具体的には、Cは、上司であったEから指示され、未計量のパレットをY社が所有する旧第四冷蔵庫に搬送し、冷蔵庫の従業員が入庫伝票を起票せずに入庫させ、その後、Cから冷蔵庫に搬入した旨の連絡を受けたEが、運送の担当者に連絡し、この連絡を受けた運送担当者が、冷蔵庫から当該パレットを搬出し、Eの親族が勤務する市外の倉庫業者が所有する市内冷蔵庫に搬入し、Eは、上記親族から報酬を受け取り、Cに対して1か月に5~10万円程度を分配しており、Y社は、上記調査委員会の調査結果を踏まえて、X及びCに対する処分を決定したことが認められるところ、この調査結果によれば、Xは、自らが中心となり、主導的に荷抜きを行っていたのに対し、Cは、荷抜きにおいて、従属的立場にあったと判断されるから、退職金の支給において、差を設けたことについて、平等原則・比例原則に反しているとはいえず、Xの行った荷抜きは、Y社の業務に関して窃盗を行ったというものであり、Y社に対する直接の背信行為であって、Y社の名誉及び信用を失墜させた犯罪行為であり、Xの永年の勤続の功を抹消する重大な不信行為であるというほかないから、Xに対する退職金を不支給としたことについて、裁量権の逸脱・濫用があるとはいえない。

このような事案の場合、担当する裁判官によって、「永年の勤続の功を抹消する重大な不信行為」の評価のしかたが異なります。

微妙な事案の場合は、運的な要素が多分にあります。

親と裁判官は選べませんので。

三審制のどこかで妥当な結論が出されることを祈るほかありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。