Daily Archives: 2025年3月21日

賃金288 降格は有効であるが、本俸を減額した点は無効であると判断した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、降格は有効であるが、本俸を減額した点は無効であると判断した事案について見ていきましょう。

住友不動産ベルサール事件(東京地裁令和5年12月14日・労判ジャーナル148号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社が平成30年10月にXを管理職である所長から営業職に降格したこと及びこれに伴う賃金減額は無効であると主張して、Y社に対し、管理職の地位及び資格等級5級の地位にあることの確認、賃金減額により未払となった賃金等の支払を求め、また、平成30年下期から令和4年上期までの報奨金について、本来は管理職の報奨金テーブルに基づいて計算されるべきところ、無効となるべき降格により営業職の賃金テーブルに基づいた金額しか支給されていない等として、報奨金の不足分等の支払を求め、そして、Y社のXに対する言動はパワーハラスメントに該当し、不法行為を構成する等と主張して、不法行為に基づく損害賠償として462万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金請求一部認容

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、部下に対して威圧的な言動により理不尽な指導を行うなど、管理職としてふさわしくな言動があったことが認められ、現にこのようなXの言動を理由として、少なくとも2名の従業員が退職したことが認められ、これに加えて、Xは、一度は、部下のない地位となったものの、その後に改めて部下を持つようになった際にも、同様の言動を繰り返していたことが認められるところ、Y社においては、このような事情を踏まえ、Xを管理職の地位に配置することはふさわしくないと判断し、本件降格を行ったものと認められ、このことについては、証人kが、Y社にとしては、Xの部下が疲弊しきっていたという状況から、Xから部下を守るということを主眼に置いた判断をした旨証言しているところであり、十分に合理性を有するから、本件降格が使用者の有する人事権の行使に当たって、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものとは認められず、本件降格は有効である。

2 Y社が、本件降格に伴い、Xの本俸を減額した点については、労働契約又は就業規則上の根拠がなく無効というべきであるが、ポスト手当を減額したことは労働契約又は就業規則上の根拠があり有効というべきである。

降格処分が有効であるからといって、当然に賃金の減額が有効となるわけではありませんので注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。