解雇415 採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案を見ていきましょう。

FIREST DEVELOP事件(東京地裁令和5年12月18日・労判ジャーナル149号62頁)

【事案の概要】

本件は、本訴において、XがY社に対し、Y社においてXが内定を辞退したと扱ったことは違法無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料200万円等の支払を求め、反訴において、Y社がXに対し、Xによる恐喝及び詐欺行為があったとして、不法行為に基づき、慰謝料405万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴:地位確認請求認容、未払賃金等請求一部認容、損害賠償請求一部認容(30万円)

反訴:請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社代表者は、令和4年3月、XがY社で受講していた研修の進捗状況に不満を持ち、その旨をXに伝えていたこと、Y社は、同月22日には、Xに対し採用内定の辞退を促し、Xの研修を打ち切っていること、同月28日、Xに対し本件内定辞退通知を送付し、その中においてもXの入社前の研修の大幅な進捗遅れを指摘していたこと、Xは、Y社の上記対応について、東京都労働相談情報センターに相談に行っていたことなどが認められ、これらの事実からすれば、本件内定辞退扱いは、Y社代表者がXの研修内容等に不満を持ち、Xからの内定辞退の申出がないにもかかわらず、Xが採用内定を辞退したものとY社が取り扱ったものと認めるのが相当であるから、本件内定辞退扱いは、Y社による労働契約の一方的な解約の意思表示(採用内定の取消し)であるところ、客観的合理的理由を欠き、権利濫用に当たり、無効である。

2 Xは、Y社の指示に従い入社前に事前研修を受けたが、その内容・進捗状況等について、Y社からXが不足する部分について具体的な指摘はなかったこと、採用内定辞退の申出をしていないにもかかわらず、Y社から一方的にXが辞退したという扱いをされたこと、本件内定辞退扱いの数日後には説明もなく出社を命じられるなどしたことなどが認められ、また、Y社に対し、Xから、Y社の対応について説明を求めても、Xからの連絡に応答しないなどXからの連絡自体を拒絶されていたこと、Xは、Y社に入社できなかったことにより、就労可能な在留資格を維持するため、3か月以内に新しい仕事を見つけられなければ帰国せざるを得ない状況に置かれたこと、このような状況に労働者が精神的に追い詰められたことなども認められ、本件内定辞退扱いは、留学生であったXの生活状況を著しく不安定な状態に陥れるものであり、著しく相当性を欠くといえ、労働者に対する不法行為を構成するというべきであり、Xには、財産的損害を回復してもなお償えない精神的損害が存在すると認めるに足りる特段の事情があるというべきであり、その慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

内定取消しについても、考え方は、解雇の場合と同じく、合理的な理由が求められます。

場面的には、感情的になってしまいがちですが、しかるべきプロセスを経ているかをできるだけ冷静に検討することが求められます。

内定取消しを有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。