Monthly Archives: 2月 2025

本の紹介2154 ユダヤ人億万長者に学ぶ「不屈」の成功法則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

勝ち続けるために必要なマインドと習慣が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

毎日、私はウェイトトレーニングやジョギングで体を鍛えている。耐えきれずにやめたくなっても必死でこらえる。そうやって培った強靭な精神力が、ビジネスの世界で歯を食いしばって長時間働き、拒絶されても前向きな姿勢を維持するのに役立っている。つまり、私にとって運動は、不屈の闘志を燃やすための燃料のようなものなのだ。」(178頁)

このようなルーティンを毎日こなしている人たちからすれば、特に驚くようなことではありません。まさに、当たり前にやっていることです。

あえて自分を追い込むことによって、強い精神と肉体を維持しているのです。

もうこんな生活を長年続けている人たちからしたら、そうでない人たちに負ける理由がないのですよ。

考え方、起きる時間、休日の過ごし方、食べるもの等、なにからなにまで、日々のあらゆる選択が違うわけですから。

残酷ですが、自明の理です。

賃金286 公務員の飲酒運転による物損事故と退職手当の全部支給制限処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、公務員の飲酒運転による物損事故と退職手当の全部支給制限処分に関する裁判例を見ていきましょう。

大津市(懲戒免職処分)事件(最高裁令和6年6月27日・労経速2558号3頁)

【事案の概要】

本件は、普通地方公共団体であるY市の職員であったXが、飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、退職手当管理機関であるY市長から、Y市職員退職手当支給条例11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けたため、Y市を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。

原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を認容すべきものとした。

【裁判所の判断】

1 原判決中、Y市敗訴部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関するXの請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、長時間にわたり相当量の飲酒をした直後、帰宅するために本件自動車を運転したものであって、2回の事故を起こしていることからも、上記の運転は、重大な危険を伴うものであったということができる。そして、Xは、本件自動車の運転を開始した直後に本件駐車場内で第1事故を起こしたにもかかわらず、何らの措置を講ずることもなく運転を続け、さらに、第2事故を起こしながら、そのまま本件自動車を運転して帰宅したというのであるから、本件非違行為の態様は悪質であって、物的損害が生ずるにとどまったことを考慮しても、非違の程度は重いといわざるを得ない。
また、Xは、本件非違行為の翌朝、臨場した警察官に対し、当初、第1事故の発生日時について虚偽の説明をしていたものであり、このような非違後の言動も、不誠実なものというべきである。
さらに、Xは、本件非違行為の当時、管理職である課長の職にあったものであり、本件非違行為は、職務上行われたものではないとしても、Y市の公務の遂行に相応の支障を及ぼすとともに、Y市の公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかである。
これらの事情に照らせば、本件各事故につき被害弁償が行われていることや、Xが27年余りにわたり懲戒処分歴なく勤続し、上告人の施策に貢献してきたこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る市長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

こういう事案は、どちらの結論の判決も書けてしまいます。

どの事実を重視し、どう評価するかの問題ですので。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2153 出世する人、しない人の1ミリの差#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「頭角を現し、大差をつける人に共通する微差とは?」と書かれています。

ほんの些細な習慣の積み重ねの差が、大きな結果の違いとして表れるのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『メメント・モリ(死を想え)』というラテン語は、自分がいつか必ず死ぬ運命にあることを思い起こさせるための警句です。ネガティブなものではなく、大局的な見地から日々を顧みてもいいという意味合いが強く、むしろ一日一日を楽しみ、有意義なものにすべき、というポジティブな思いが込められてた言葉です。死を考えることは、生を考えることでもあります。」(161頁)

若い頃は、時間が無限に存在するような錯覚を抱いていましたが、年齢を重ねるごとに、1歩ずつ死に向かって歩いていることが理解できます。

「時は金なり」と言いますが、正しくは「時は命なり」です。

無駄なこと、嫌なことに1秒たりとも貴重な時間を使いたくありません。

世間体や他人の評価を気にしているうちに、人生は終わってしまいます。

老後、人生を振り返ったときに、「あー自分の人生、なんだったんだろう」なんて思いたくないのです。

自分に力をつけ、人や組織に依存せず、何事にも固執せず、好きなように生きるのが、私の人生のモットーです。

賃金285 高額な固定残業代の定めであるにもかかわらず、実際の時間外労働時間とは直ちに結び付かないとして、有効性を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、高額な固定残業代の定めであるにもかかわらず、実際の時間外労働時間とは直ちに結び付かないとして、有効性を認めた事案を見ていきましょう。

ゆうしん事件(東京地裁令和5年10月6日・労経速2558号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、令和2年3月1日から令和4年2月28日までの間、法定の労働時間を超過して時間計算書のとおり時間外労働をしたと主張して、①割増賃金278万4589円及びこれに対する遅延損害金、②労働基準法(以下「労基法」という。)114条に基づく付加金278万4589円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが入社した平成30年8月1日の時点では給与規程が制定、周知されていたと認められる。そして、給与規程に定められた役割給、役職手当及び資格手当は、いずれもその名称からは直ちに割増賃金の支払と解することはできないものの、給与規程の本文には、それぞれ本人の役割、役職者の役割及び資格に応じて、いずれも業務が多くなることを見込んで、割増賃金見合分として支給する旨が明記されていること(11条2項、12条、13条)からすれば、これらの手当はいずれも、その全額が割増賃金に対する対価として支払われたものと認めるのが相当である。そして、これらは給与規程の定めについても同様である。
これに対しXは、D社労士の説明資料からは、役割給、役職手当及び資格手当の少なくとも一部は、会社内における役割が重要になることに伴って基本給が加算されるという趣旨を含むものと解すべきと主張するが、同資料には会社が期待する役割に応じて賃金や役職を決定する旨の記載があるものの、前記の給与規程の本文の定めと併せて検討すれば、役割給、役職手当及び資格手当に基本給としての性質が含まれるものと理解することはできない。
Xは、役割給、役職手当及び資格手当の合計は13万円と高額であり、このような固定残業代の定めは、労基法36条4項の規制である45時間を上回る時間外労働を想定しており、時間外労働を恒常的に行わせることを前提とした規程であると主張する。しかしながら、固定残業代の額と従業員が実際に行う時間外労働の時間とは直ちに結び付くものではなく、時間外労働を恒常的に行わせることを前提とした規程であるとのXの主張は採用することができない

2 労基法37条5項は、割増賃金の算定基礎賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない旨定めるところ、その趣旨は、労働者の個人的事情に基づいて支給される賃金を割増賃金の算定基礎賃金から除外するものと解される。このような趣旨に鑑みれば、労基法施行規則21条において算定基礎賃金から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものと解するべきである。
そこで検討するに、給与規程16条は、住宅手当として、住宅ローン又は家賃支払額に応じて1万円、1万5000円又は2万円を支給する旨定め、令和2年7月に制定された給与規程は、家賃手当の上限を1万円と定めているところ、Xは、こうした給与規程の定めがある中、入社時から月額2万円の家賃手当の支給を受け続けている。またY社は、Xが入社時に実家に住んでいたことをもって、Xが不正に家賃手当を受給していたと主張するが、Y社が上記の各給与規程に基づきXの家賃手当の支給要件及び金額をどのように判断したのかは明らかにしていない
そしてXは、訴外Aから被告に入社する際、訴外Aから家賃手当として支給を受けていた2万円を引き続き支給されることでY社と合意した旨供述するところ、Xが勤務場所を変更しないままY社と雇用契約を締結したことからすれば、Xの供述は合理性を有するというべきである。
以上によれば、Y社は、Xとの合意に基づき、実際の住宅費とは無関係に家賃手当2万円を支給していた可能性が高く、そうすると本件の家賃手当は、住宅に要する費用に応じて算定された住宅手当であるとは認めるに足りないから、労基法37条5項に基づいて割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外されると認めることはできない

固定残業制度の有効要件については、ほぼ固まったといえるので、数年前のような下級審レベルでのゆらぎはほとんどなくなりました。

また、上記判例のポイント2のような除外賃金をめぐる解釈についても、しっかりポイントを押さえれば難しくはありませんので、凡ミスをしないようにしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2152 億万長者の感謝力!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

感謝すること、感謝を伝えることがいかに大切であるかが説かれています。

人に何かをしていただいたときに「ありがとうございます」すら言えない人に何ができるというのでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

誰かになにかをしてもらったときに、『自分は相手にきちんと与えることができているだろうか』『相手に対して気遣いができているだろうか』と自問自答したり、『相手がこんなことをしてくれたのに、自分はまだまだなにもしてやれていないのではないか』という視点で考えてみればよいのです。」(177頁)

人間関係やビジネスは「お互い様」で成り立っています。

一方が他方に対して、与え続ける・もらい続けるという関係は、長続きしません。

特にまだ力がない若いうちは、上の人からいろいろなモノを与えられることが多いですが、そんなときこそ、自分に何が返せるのかを自問自答するのです。

人からもらうことに慣れてしまい、それが当たり前になってしまわないように気を付けましょう。

とはいえ、今の時代、そんなことを教えてくれる先輩はほぼいないと思います。

パワハラだの老害だのと言われるのが関の山ですからね(笑)

あほくさー

解雇415 採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案を見ていきましょう。

FIREST DEVELOP事件(東京地裁令和5年12月18日・労判ジャーナル149号62頁)

【事案の概要】

本件は、本訴において、XがY社に対し、Y社においてXが内定を辞退したと扱ったことは違法無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料200万円等の支払を求め、反訴において、Y社がXに対し、Xによる恐喝及び詐欺行為があったとして、不法行為に基づき、慰謝料405万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴:地位確認請求認容、未払賃金等請求一部認容、損害賠償請求一部認容(30万円)

反訴:請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社代表者は、令和4年3月、XがY社で受講していた研修の進捗状況に不満を持ち、その旨をXに伝えていたこと、Y社は、同月22日には、Xに対し採用内定の辞退を促し、Xの研修を打ち切っていること、同月28日、Xに対し本件内定辞退通知を送付し、その中においてもXの入社前の研修の大幅な進捗遅れを指摘していたこと、Xは、Y社の上記対応について、東京都労働相談情報センターに相談に行っていたことなどが認められ、これらの事実からすれば、本件内定辞退扱いは、Y社代表者がXの研修内容等に不満を持ち、Xからの内定辞退の申出がないにもかかわらず、Xが採用内定を辞退したものとY社が取り扱ったものと認めるのが相当であるから、本件内定辞退扱いは、Y社による労働契約の一方的な解約の意思表示(採用内定の取消し)であるところ、客観的合理的理由を欠き、権利濫用に当たり、無効である。

2 Xは、Y社の指示に従い入社前に事前研修を受けたが、その内容・進捗状況等について、Y社からXが不足する部分について具体的な指摘はなかったこと、採用内定辞退の申出をしていないにもかかわらず、Y社から一方的にXが辞退したという扱いをされたこと、本件内定辞退扱いの数日後には説明もなく出社を命じられるなどしたことなどが認められ、また、Y社に対し、Xから、Y社の対応について説明を求めても、Xからの連絡に応答しないなどXからの連絡自体を拒絶されていたこと、Xは、Y社に入社できなかったことにより、就労可能な在留資格を維持するため、3か月以内に新しい仕事を見つけられなければ帰国せざるを得ない状況に置かれたこと、このような状況に労働者が精神的に追い詰められたことなども認められ、本件内定辞退扱いは、留学生であったXの生活状況を著しく不安定な状態に陥れるものであり、著しく相当性を欠くといえ、労働者に対する不法行為を構成するというべきであり、Xには、財産的損害を回復してもなお償えない精神的損害が存在すると認めるに足りる特段の事情があるというべきであり、その慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

内定取消しについても、考え方は、解雇の場合と同じく、合理的な理由が求められます。

場面的には、感情的になってしまいがちですが、しかるべきプロセスを経ているかをできるだけ冷静に検討することが求められます。

内定取消しを有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。

本の紹介2151 成功の条件#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「『人』と『お金』と『選択の自由』」です。

もうこれが答えです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つき合っていく人や、仲間の存在っていうものは、君自身のセルフイメージにとても大きな影響を与える存在なんだ。成功の道を歩き始めるならなおさらのこと。これはとくに意識しておかなくてもいいけど、覚悟だけはしておいたほうがいい。必ず新しい出会いと別れがやってくるから」(122頁)

いつも書いていることですが、引き寄せの法則、類友の法則からいって、日頃、付き合っている人は、概ね、自分と同じレベルになります。

いつまでも気楽な関係を続けていると、気づいたらコンフォートゾーンから抜け出せなくなってしまい、何年経っても、ずっと同じレベルのままです。

自分に負荷がかかる環境にあえて身を置くことを意識的にやらないと、楽なほうへ楽なほうへと流されてしまいます。

気づいた時には、もう如何ともしがたいところまで落ちてしまいます。

人生は、いつだって弱い弱い自分との闘いです。

No pain, no gain.

賃金285 夜勤時間帯における割増賃金算定の基礎単価は、通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきとしつつ、趣旨および内容が明確であれば別途の定め方も認容されるとした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、夜勤時間帯における割増賃金算定の基礎単価は、通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきとしつつ、趣旨および内容が明確であれば別途の定め方も認容されるとした事案を見ていきましょう。

社会福祉法人A事件(東京高裁令和6年7月4日・労経速2562号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して、Y社の運営するグループホームの生活支援員として勤務していたXが、Y社に対し、夜勤時間帯(午後9時から翌日午前6時まで)の泊まり勤務について、Y社には労基法37条に基づく割増賃金の支払義務があると主張して、①平成31年2月から令和2年11月までに支給されるべき未払割増賃金312万9684円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労基法114条所定の付加金312万9684円+遅延損害金の支払を求める事案である。
なお、退職日の翌日以降の遅延損害金については、原審では年3%の割合による請求であったところ、当審で上記のとおり請求が拡張されたものである。

原審は、夜勤時間帯が労働時間に当たると認めた上で、泊まり勤務1回につき6000円の夜勤手当が支給されていたことに鑑み、夜勤時間帯から休憩時間1時間を控除した8時間の労働の対価を6000円とすることが労働契約の内容となっていたと認定し、割増賃金算定の基礎となる賃金単価を750円としてこれを算定して、Xの請求を、①未払割増賃金69万5625円+遅延損害金、②付加金69万5625円+遅延損害金の支払を求める限度で認容したところ、Xが控訴し、前記1のとおり遅延損害金請求を拡張した。

【裁判所の判断】

 原判決を次のとおり変更する。
 Y社は、Xに対し、331万5789円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、付加金312万9684円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当裁判所は、夜勤時間帯は労働時間に該当すると認められ、夜勤時間帯についての割増賃金の額は通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきであり、そうすると、Xの請求は全部理由があると判断する。

2 Y社は、夜勤時間帯から休憩時間1時間を控除した8時間の労働の対価を夜勤手当6000円とする旨の賃金合意があったから、夜勤時間帯の割増賃金算定の基礎となる賃金単価は750円となると主張する。
しかし、Y社は、これまで、グループホームの夜勤時間帯にY社の指揮命令下で生活支援員が行うべき業務はほとんど存在しないという認識を前提として、就業規則においては、巡回時間を想定した午前0時から午前1時までの1時間を除き、夜勤時間帯を勤務シフトから除外し、本件訴訟においても、夜勤時間帯については緊急対応を要した場合のみ申請により実労働時間につき残業時間として取り扱う運用をしていると主張し、夜勤時間帯が全体として労働時間に該当することを争ってきたものであって、XとY社との間の労働契約において、夜勤時間帯が実作業に従事していない時間も含めて労働時間に該当することを前提とした上で、その労働の対価として泊まり勤務1回につき6000円のみを支払うこととし、そのほかには賃金の支払をしないことが合意されていたと認めることはできない
労働契約において、夜勤時間帯について日中の勤務時間帯とは異なる時間給の定めを置くことは、一般的に許されないものではないが、そのような合意は趣旨及び内容が明確となる形でされるべきであり、本件の事実関係の下で、そのような合意があったとの推認ないし評価をすることはできず、Y社の上記主張は採用することができない。

非常に重要な高裁の判断です。

上記判例のポイント2を参考に賃金体系を変更する場合には、決して、素人判断でやらないことです。多くの場合、不利益変更になりますし、やり方を間違えると残業代の基礎賃金が増額することになりますので、細心の注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2150 この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

終始、王道中の王道の方法が紹介されています。

タイトルは決して誇張ではなく、真実です。

問題は、わかることとできることは全く異なる、ということです。

99%の人は、この本に書かれていることをやりませんので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私はこれまで、成功できなかった人たちをよく観察して、その原因を探ってきた。そして気づいたのは、成功に至らなかったのは、想像力が委縮していたり、その夢に十分に時間をかけられなかったりしたためだということだ。これはあなた自身についても言える。時間をいかに使うかによって事の成否が決まる、とぜひ肝に銘じほしい。」(173頁)

「時間」はその人の「人生」そのものです。

時間を無駄にするということは、人生を無駄にしているのと全く同義です。

時間をいかに使ってきたか、何に投下してきたのかの結果が、今の自分を作り上げています。

これまでも、これからも、限りある時間をいかに使うか、何に投下するかが、その人の人生を作り上げます。

そして、大切なのは、その過程をいかに楽しめるか、です。

楽しい人生などありません。

人生を楽しめる自分がいるだけです。

配転・出向・転籍57 配転命令拒否を理由とした解雇を有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、配転命令拒否を理由とした解雇を有効とした事案を見ていきましょう。

医薬品製造販売業A社事件(横浜地裁令和6年3月27日・労経速2559号20頁)

【事案の概要】

本件は、労働者であるXが、令和4年1月24日付けで行われた同年4月1日にb本社へ転勤させる旨の命令及び同年3月30日付けで行われた解雇の意思表示が、いずれも無効であると主張して、雇用契約に基づき、Y社に対し、①Y社との間で雇用契約上の権利を有することの確認及び②Xがb本社で勤務する義務がないことの確認を求めるとともに、③同年5月1日以降の賃金(バックペイ)として、令和4年5月1日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、47万7500円(月給)、毎年7月31日及び12月31日限り、各98万9500円(賞与)+遅延損害金の支払、④割増賃金41万3050円+遅延損害金の支払、⑤令和4年4月分賃金につき、欠勤を理由に減額されたことは不当であるとして、未払賃金8万9133円+遅延損害金の支払、⑥Xに対して行われたハラスメントについて、Y社の安全配慮義務違反があると主張して、損害賠償金110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、20万6107円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、本件配転命令につき、①業務遂行能力及びチームマネジメント能力の見極めを業務上の必要性として挙げているほか、②環境を変え、新たな同僚や上司の下、業務遂行能力及びマネジメント能力を発揮するよう、人材活用を図ることについても、業務上の必要性に当たると主張している。
この点、Xは、本件試用期間延長措置が無効である以上、Xの業務遂行能力及びチームマネジメント能力の見極めの必要性はないかのような主張をしているが、雇用契約が継続している限り、使用者は、職員の配置のほか、賞与額の査定、昇給や昇格等、人事上の措置を講じるに当たり、様々な場面で、従業員の能力を見極め、その評価を行う必要があるのが通常であって、このような必要性は、試用期間中であるか否かを問わず肯定されるものであって、これに反するXの主張は、採用し得ない。
Xは、能力の見極めや、Xの能力の活用を図るのであれば、dオフィスに所属したままでも可能である旨主張しているが、Xは、最初に担当することになったO社PJで、派遣社員であるHから、Xによるパワハラ被害の申告を受け、そのような状況に陥った原因について、O社PJのメンバーであるHやPの能力不足と共に、F課長代理の指導力不足を強調していたものである。dオフィスは、Xを除けば、正社員がF課長代理とGの二名しかいない小規模な研究施設であって、GはXよりも10歳以上も年下であり、Xに対する能力の見極めや指導は、dオフィスにいる限り、F課長代理が行わざるを得ない状況にあったというべきところ、信頼関係が損なわれたF課長代理の下で勤務をさせるよりも、E部長を含め人員の充実したb本社で勤務をさせた方が、X自身の本来の能力が活かされ、より目の行き届いた形でその能力の見極めが可能であると判断したY社の決定は、十分に合理性のあるものというべきである。
また、Xは、Hが週報作成の前提となる実験ノートを作成できておらず、Pの日報や実験ノートにも不備が多かったにもかかわらず、F課長代理が適切な指導を行なわなかったことを論難し、問題の所在であるF課長代理を異動させるべきであった旨主張しているが、そもそも、職員の能力不足や経験不足は、上司の指示、指導や教育などによって直ちに改善するものではなく、F課長代理が的確な指導を行っていたとしても、Xが感じていたH及びPの能力不足や経験不足に起因する問題が、解決されたとは思われない。

2 本件配転命令は、D市にあるdオフィスから、b本社への異動を命じるものであり、転居を伴う転勤命令であって、従業員であるXの私生活に、一定の影響を与えるものであること自体は疑いがない。
もっとも、給与その他、勤務地を除く労働条件については、本件配転命令により変更されるものではないほか、Y社は、転勤規程(書証略)を設けて、家具移転費用、転勤交通費、転勤一時金、賃貸住宅費用補助等の名目で、転勤にともなう諸経費の会社負担を認め、単身赴任者については、毎月1回の帰省手当を支給するなど、転勤に伴う経済的な負担を軽減する制度を定め、また、その案内をXに対して行っている。
そのほか、Xは、E部長やM取締役の入社時の面接においても、b本社でなければできない研究や実験があるとの認識の下、業務上の必要性があるのであれば、b本社への異動が可能である旨回答していることも踏まえれば、本件配転命令がB市への転居を伴うこと、単身赴任をするか、自宅周辺で就労している妻を退職させ、妻と共にB市に赴任するかいずれかを選択する必要が生じていたことといった事情を考慮しても、本件配転命令が、労働者に対し、甘受し難い不利益を与えるものとは言い難いというべきである。

3 以上によれば、本件配転命令は、業務上の必要性に基づくものであり、他の不当な目的・動機をもってなされたものであるとも、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとも認められないというべきであるから、Y社に裁量権の逸脱はなく、これが権利濫用であるとのXの主張は採用し得ない。

職員の能力不足や経験不足は、上司の指示、指導や教育などによって直ちに改善するものではないと、至極当たり前のことが述べられていますが、このような当たり前のことを裁判所に認定してもらうとなんだかほっとします。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。