退職勧奨25 退職勧奨による退職合意の有効性が肯定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、退職勧奨による退職合意の有効性が肯定された事案を見ていきましょう。

UNIVA・Oakホールディングス事件(東京地裁令和6年3月28日・労経速2562号33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結しY社において勤務していたXが、Y社から退職扱いとされたことについて解雇であり退職合意が成立していないこと、仮に成立していたとしても意思表示に瑕疵があることを主張して、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②平成29年法律第44号による改正前の民法536条2項に基づき上記退職扱い以降の賃金として、令和2年4月から本判決確定の日まで、毎月25日限り月額100万円の割合による金員+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社からの本件退職勧奨を受け本件退職届に署名押印してY社に対し提出したこと、令和2年1月15日が最終出社日となり以後Y社に出勤していないこと、本件退職勧奨の際もY社から解雇ではなく自主退職である旨明確に伝えられたことが認められる。
 これらの事実によれば、Xは、Y社からの本件退職勧奨に応じ、Y社との間で退職合意をしたと推認できる。

2 Xは、山梨県民信用組合事件において示された自由意思論は、退職合意の意思表示の場面においても適用され、本件におけるXの合意退職の意思表示は自由意思に基づくものとはいえない旨主張する(なお、当該主張は、退職合意の成立要件に位置付けるのが相当である。)。
上記判例においては、労働者側には意思決定の基礎となる情報を収集する能力が限られており、使用者側との間に情報格差があり、使用者から求められるがままに不利益を受け入れる行為をせざるを得なくなるような状況に置かれることも少なくないことから、「自由な意思と認められる合理的な理由」を検討して慎重に労働者の意思表示の存否を判断することが要請されているものと解される。しかしながら、そもそも、合意退職の意思表示は、退職することといったように効果が明確であり、X及びY社間で情報格差が類型的に生じるような場面とはいえない。そうすると、本件は、上記判例とは事案を異にするというべきであり、自由意思論を適用すべき事案であるとはいえない
もっとも、労働者の合意退職の意思表示は、重要な意思表示であるから、その認定には慎重になるべきとはいえるものの、本件においては、Xが本件退職願に記入した上で、XがY社から解雇通知されたことを認めるに足りる証拠がないにもかかわらず、同月16日以降出勤していないことからすれば、Xが合意退職の意思表示をしたことは明らかであるといえる。

上記判例のポイント2のXの主張は理解できるところですが、裁判所は事案を異にすると判断しています。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。