有期労働契約128 契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

ドコモ・サポート事件(東京地裁令和3年6月16日・労判1315号85頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成25年9月4日に、期間を同年10月1日から平成26年3月31日までとして有期労働契約を締結し、その後、同契約を4回更新された後、4回目の更新期間満了時である平成30年3月31日にY社から雇止めされたXが、Xには労働契約法19条2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、従前の有期労働契約の内容で契約が更新され、平成31年3月31日に退職したことから同日に同契約が終了したと主張して、Y社に対し、同契約に基づき、平成30年4月分から平成31年3月分までの賃金として平成30年4月から平成31年3月まで毎月20日限り23万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 このようなY社における有期契約労働者に関する雇用制度及びその運用状況に照らせば、Y社では、有期契約労働者については、無期契約労働者へのキャリアアップ(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員へのキャリアアップ及びスタッフ社員からパートナー社員へのキャリアアップも含む。)の仕組みを設ける一方で、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない者については、長期雇用の適性を欠くものと判断し、更新限度回数又は契約期間の上限により契約を終了するという人事管理をしているものといえる。そうすると、Y社の雇用制度においては、有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験に合格しない限りは、有期契約労働者として5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないものといえる。

2 Y社における雇用制度及びその運用状況を踏まえると、Y社の有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない限りは、5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないこと、また、Xにおいても、上記運用に沿った有期労働契約を締結し、その後の更新状況も同運用に沿ったものであるから、Xにおいて、本件契約が、更新限度回数4回を越えて、更に更新されるものと期待するような状況にあったとはいえないこと、加えて、Xは、平成28年度及び平成29年度に、エリア基幹職社員の採用募集に応募し、選考試験を受けたが、いずれの年度においても選考試験に合格できなかったことからすれば、Xが、平成30年3月31日の本件契約の満了時点で、本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない

無期契約労働者の登用試験を設けるという手法は、比較的よく目にしますが、試験の運用方法が恣意的な場合には、結論が異なり得ますので注意が必要です。

また、ここでも、更新上限回数を一番最初の契約のときに契約内容に入れておくことがポイントです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。