セクハラ・パワハラ92 原判決を変更し、上司の性的暴行等に基づく損害賠償等請求が一部認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、原判決を変更し、上司の性的暴行等に基づく損害賠償等請求が一部認められた事案を見ていきましょう。

東京税理士会神田支部事件(東京高裁令和6年2月22日・労判1314号48頁)

【事案の概要】

本件は、本訴において、Y社との間で雇用契約を締結し、事務局職員として稼働していたXが、総務部長であるBから性的暴行を受け心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、休職せざるを得なくなったと主張して、B及びY社に対し、Bについては不法行為に基づき、Y社については使用者責任又は安全配慮義務違反に基づき、連帯して休業損害等の合計約1380万円等の支払を求め、また、Xが、本件性的暴行を原因として休職したものであり、Y社による解雇は解雇権の濫用に当たり無効であるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金等の支払等を求め、反訴において、Bが、Xが本訴請求の提訴前に記者会見を開き、Bから性被害にあったため損害賠償請求をするなどと説明したことが名誉毀損に当たると主張して、不法行為に基づき、慰謝料等550万円等の支払並びに謝罪広告の掲載を求めた事案である。

原判決は、解雇は有効であるとして、解雇無効地位確認等請求を棄却し、Bの性的暴行は認められない等として、損害賠償請求も棄却し、Bの名誉毀損に基づく慰謝料等請求を棄却したため、X及びBが控訴した。

【裁判所の判断】

原判決変更

損害賠償等請求一部認容(本訴)

慰謝料等請求棄却(反訴)

【判例のポイント】

1 令和元年8月21日にBの事務所内で行われた一連の性的行為は、Xにおいては、支部役員である税理士と支部事務局の職員という関係を意識して、Bの言動に対してあからさまに拒絶的な態度をとることを当初控えていたものの、Bと性的行為に及ぶことを期待も受容もしていなかったのに、Bにおいて、Xに対し性的関心を抱き、性交まで進む意図の下に、徐々に性的行為をエスカレートさせていく形で、一方的に行ったものであると推認され、全体として、同意のない性的行為であったとの評価を免れず、また、Xの供述中に、居酒屋での滞在時間や、事務所内での双方の位置関係、移動状況等に関する点で事実と整合しない部分やあいまいな部分があることは、上記認定を妨げる事情とはいえないから、Bは同意のない性的行為によりXの人格権を侵害したことについて、不法行為責任を負う。

2 本件性的暴行は、XとBが、支部の業務とは無関係に、私的に飲食を共にする目的で、業務時間外に二人で居酒屋において会食をした後に、引き続き二人でBの事務所で過ごす間に起きた出来事であって、これに起因して発症したXのPTSDは業務上の疾病であるとはいえず、また、本件面談に起因してXの体調が出金できないまでに悪化したとは認められないから、本件解雇は、業務上疾病にかかり療養のために休業する期間中にされたものとは認められず、労働基準法19条に反するとはいえない。

立場に上下関係がある場合には、特に注意をする必要があります。

昨今の不同意わいせつ、不同意性交事案同様、行為者が、相手が同意していたと思っていた(勘違いしていた)としても、大きな問題に発展しますので、気を付けましょう。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。