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今日は、職場いじめの有無と休憩室での録音に関する裁判例を見ていきましょう。
ハイデイ日高事件(東京地裁令和5年2月3日・労判1312号66頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Yに対し、YのXに関する言動等が職場いじめに当たり、これにより精神的苦痛を受けたと主張して、不法行為に基づき、慰謝料200万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Yの発言は、「いやだ」、「気持ち悪い」、「大っ嫌い」等と主としてYのXに対する主観的な感情・評価を吐露するものにすぎず、Xに係る個別具体的な事実を摘示し、これによりXが社会から受ける客観的な評価を低下させるようなものであったとはいえないし、具体的な事実に基づく論評・評価に当たるものであったともいえない。そして、Xは、Yが出勤する日はほぼ毎日のように録音し、その数は500件以上であるところ、Yの発言中、Xに対する否定的評価が含まれるものは上記2日間のものに限られ、本件全証拠を精査しても、Yによる継続的な言動があったと認めるに足りないし、いずれもX不在の本件店舗の休憩室における一時的な会話であり、Xが秘密録音したことによって、Xの知るところとなったにすぎないのである。このような行為4の1及び行為4の2に係る具体的な状況を踏まえてみると、これがXに対する不法行為に当たるものとまでは解されない。
2 Yは、平成29年3月14日及び同月28日の各会話を録音した媒体及びその反訳書について、違法収集証拠に該当するから証拠能力がないと主張するが、上記録音媒体は、Xが、本件店舗の従業員が共同して使用する本件店舗の休憩室での会話を、Yが知らない間に録音したというにとどまり、その録音の手段・方法に照らして、著しく反社会的な手法で人格権を侵害して取得されたとまでは認められないのであり、証拠能力は否定されないというべきである。
上記判例のポイント2のように、秘密録音については、よほど秘密性の高い会話を除き、違法収集証拠とは評価されません。
なお、証拠能力の問題とは別に、プライバシーや個人情報保護の観点から、社内での録音は禁止と就業規則等に規定し、周知することをおすすめいたします。
社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。