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今日は、競業避止条項および退職金減額規定の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
日本産業パートナーズ事件(東京高裁令和5年11月30日・労判1312号5頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と雇用契約を締結していたが退職したXが、Y社に対し、①退職金規程に基づく業績退職金525万4000円+遅延損害金、②平成31年3月支給分の賞与(業績年俸)の未払額245万4400円+遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、Xの請求を棄却したところ、Xが控訴した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 Xは、競業避止義務を課す合理性が、情報やノウハウの他社への流出により転職先が利益を受け得ることの防止にあるというのであれば、X退職時には、B株式会社に対しどのような提案を行うかなど、案件がある程度具体化しており、Xがそれを知っていたことが重要であるが、本件においてそのような事実はなかったなどとして、Xに悪質な競業避止義務違反があったとはいえないと主張する。
しかし、Xは、Y社に在職中、B株式会社への提案資料等の作成を担当し、令和元年12月にはB株式会社・C株式会社の案件に提案先の優先順位として最も高いランク付けをした資料を社内で共有するなど、Y社が引き続きB株式会社・C株式会社の案件に高い関心を有していることを認識しながら、転職活動中であった同年11月ないし12月に、B株式会社・C株式会社関連を含む提案資料等を大量に印刷して社外に持ち出し、Y社を退職した直後である令和2年2月に競合他社に転職して、同年夏頃から転職先でB株式会社・C株式会社のカーブアウト案件を担当し、転職先の同案件についての提案が採用されるに至っている事実が認められることは前記引用に係る原判決説示のとおりであり、上記の事実に照らせば、Xに悪質な競業避止義務違反があったというべきことは明らかであって、Xが退職した時点において、Y社においてB株式会社・C株式会社の案件につき具体的な提案内容が定まっていたかどうか、また、その内容を控訴人が知っていたかどうかによって上記判断は左右されない。
一般的な同業他社への転職が、競業避止義務違反と判断されることはまずありません。
本件のようにプラスアルファとしてより悪質な事情がある場合には競業避止義務違反と評価されるのが一般的です。
競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。