Daily Archives: 2024年11月25日

解雇412 試用期間中に逮捕勾留された旨を連絡せず、5日半欠勤した従業員の解雇を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、試用期間中に逮捕勾留された旨を連絡せず、5日半欠勤した従業員の解雇を認めた事案を見てきましょう。

シービーアールイーCMソリューションズ事件(東京地裁令和5年11月16日・労経速2555号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結しY社において勤務していたXが、Y社から試用期間中に留保された解約権を行使されたことについて、本件解雇が無効である旨主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②令和4年12月支払分の賃金45万9346円及び遅延損害金の支払、③令和5年1月支払分から本判決確定の日までの賃金毎月月額116万6667円+遅延損害金の支払、④不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料200万円と弁護士費用相当額20万円の合計220万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 5日半の欠勤については、労働者の労働契約における最も基本的かつ重要な義務である就労義務を放棄したものとしてそれ自体重大な違反であるといえる。Xは、5日半の欠勤に先立ち有給休暇及び振替休日を取得しているものの、本件逮捕勾留という事の性質上、引継ぎ等がされたとは考え難いから、これらを含めれば、Y社において、Xが突然長期間不在になったことによって多大な迷惑を被りその穴を埋めるために対応を余儀なくされたことは明らかである。また、Xは、Y社から欠勤について事情の説明を求められても、Y社に対し、個人的事情によるものとしか説明していない。犯罪による身柄拘束といった高度にプライバシーに関わる事項であるものの、それを知らないY社から欠勤について事情の説明を求められるのは当然である。Xは、本件解雇後、Y社に対し、欠勤の理由が本件逮捕勾留であることを伝えているものの、それであれば、欠勤する際に伝えるべきであり、本件逮捕勾留についてY社に対し一切伝えないといった当時の対応は不適切であったといえる。Xは、Y社において勤務を開始したばかりでY社との間の信頼関係を徐々に構築していく段階であったところ、Y社に対し、欠勤の理由について個人的事情によるものとしか回答しない状態であったから、Y社からすれば、Xの就労意思すら不明であるし、Xについて仮に本採用をしても理由を明らかにしないで突然長期間の欠勤をする可能性がある無責任な人物と考えるのは当然である。
これらによれば、Xの上記対応によって、XとY社との間の労働契約の基礎となるべき信頼関係は毀損されたといえる。なお、Xの欠勤が逮捕勾留によるものといった当時判明していなかった事実を考慮しても、不起訴処分後に起訴することは妨げられないこと、犯罪の内容等によっては逮捕勾留の事実も社会的に半ば有罪と同視されてマスコミ報道等で取り上げられY社の社会的評価が毀損されることもあり得ることによれば、Xを本採用することは、Y社においてなおさらリスクが高かったといえる。
これらについては、Y社において、本件労働契約締結当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実であるといえるし、Y社において引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが相当であるともいえる。
したがって、Xは、試用期間中の解雇事由について定めた就業規則における「正当な理由のない無断欠勤が3日以上に及んだ場合」(8条1項2号)に該当するといえるし、欠勤すること自体の連絡があったことから「無断欠勤」とはいえないと解する余地があったとしても、少なくとも「社員としての本採用が不適当と認められた場合」(本条柱書)及び「その他前各号に準ずる程度の事由がある場合」(同条1項11号)に該当するといえる。

逮捕勾留されたことを素直に会社に伝えられない気持ちはよくわかります。

伝えたら伝えたで難しい状況になりますので。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。