Daily Archives: 2024年10月21日

セクハラ・パワハラ89 上司らの発言につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求が一部認容された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、上司らの発言につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求が一部認容された事案を見ていきましょう。

アリスペッドジャパン事件(東京地裁令和5年3月2日・労判ジャーナル146号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき、未払残業代等の支払を求め、また、在職中に職場内でパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントを受けたと主張して、安全配慮義務違反又は使用者責任に基づき、損害賠償金300万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払残業代等支払請求棄却

損害賠償等請求一部認容

【判例のポイント】

1 D課長の各行為は、職務上何らの必要性のない、粗暴又は性的な言動であって、Xの就業環境を害するものであることは明らかであるから、Y社はXに対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うものというべきであり、また、C代表は、1年以上過去の出来事について、食事会の場で、他の従業員の前で叱責をすること自体、指導方法として極めて不相当であるといえるから、Xの就業環境を害するものであったといえ、Y社は、Xに対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うものというべきである。
そして、Xは、C代表及びD課長が性的な言動を繰り返していたと主張するところ、上記の各行為から推認される両名の人物像及びY社の職場環境からすれば、そのような言動があったものと推認することができるが、その点については、慰謝料を算定する際の考慮要素の一つとするのが相当であるから、Xに生じた精神的損害に係る慰謝料額としては、60万円が相当である。

性的言動を繰り返していたという主張について、仮に客観的な証拠が存在しない場合でも、上記のような推認により認定されることがありますので注意しましょう。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。